平和の訪(おとず)れ

　貧(まず)しい暮(く)らしの中にも、子どもたちは遊びを見出し仲間を求めた。大人もまた、祭りやスポーツ行事に集まった。そこでは、日常(にちじょう)の辛苦(しんく)を忘(わす)れ、喜びや感動を分かち合うことができた。笑顔と歓声(かんせい)に包まれ、平和の訪(おとず)れを感じるひとときであった。佐々木氏は、明るい気持ちでシャッターを切りながらも、穏(おだ)やかな暮(く)らしを知らずに亡(な)くなった幼(おさな)い命を思わずにはいられなかった


■子どもと遊び

　一人でぼんやり立っていたり、寂(さび)しそうな表情(ひょうじょう)を浮(う)かべていることの多かったヒロシマの子どもたちにも、次第に、夢中(むちゅう)になって遊ぶ姿(すがた)、明るい笑顔が見られるようになった。子どもの世界に、安心して遊べる時間と空間が戻(もど)ってきたのだ。

 

渡船場(とせんじょう) の少年（写真左）

昭和28(1953)年　基町(もとまち)

基町(もとまち)と寺町を結ぶ渡(わた)し船(ぶね)の待合所からのぞく少年。船頭の息子なのか、寂(さび)しそうに留守番(るすばん)をしていた。

木馬にまたがる少年

昭和24(1949)年　八丁堀(はっちょうぼり)

百貨店屋上の木馬に乗って遊ぶ少年。硬貨(こうか)を入れて動かす電動遊具だが、少年は自分で体を揺(ゆ)すっていた。

芝居小屋(しばいごや)をのぞく

昭和29(1954)年　仁保町(にほまち)

小さな芝居小屋(しばいごや)での大衆演劇(たいしゅうえんげき)は、庶民(しょみん)の娯楽(ごらく)の一つであった。開演(かいえん)前の芝居(しばい)小屋(ごや)を興味(きょうみ)興味津々(しんしん)でのぞく子どもたち。

たたき売りのまね

昭和28(1953)年　 　基町(もとまち)

基町(もとまち)の市民広場にサーカスがやって来た。詰(つ)めかけた見物客を相手に露店(ろてん)のたたき売りをまねて遊ぶ少年。

雪遊び

昭和30(1955)年　中島町

平和記念公園は一面の銀世界。歓声(かんせい)を上げながら夢中(むちゅう)で雪玉を転がす袋町(ふくろまち)小学校の児童。

 

■祭りと行事

　戦後間もなく、地域(ちいき)の祭りや学校の運動会が復活(ふっかつ)した。復興(ふっこう)が進むにつれ、新しい祭りが生まれ、各種スポーツの競技(きょうぎ)大会(たいかい)も開催(かいさい)された。人々の熱気や歓声(かんせい)は、苦労を共にする市民に連帯感と活気をもたらした。

マッカーサー元帥(げんすい)杯(はい)競技(きょうぎ)大会

昭和24(1949)年　基町(もとまち)

第3回マッカーサー元帥(げんすい)ー杯(はい)全国庭球(ていきゅう)卓球(たっきゅう)競技(きょうぎ)大会が広島市で開催(かいさい)された。この日のために広島市中央庭球(ていきゅう)場が新設(しんせつ)され、全国から2,000人近い参加者を迎(むか)えた。

国民体育大会

昭和26(1951)年　観音町

10月27日、県営(けんえい)総合(そうごう)グランドで行われた第6回国民体育大会秋季大会開会式。受け入れに伴(ともな)う数々の難局(なんきょく)を、市民の熱意と協力で乗り切った。

オリンピック聖火(せいか)リレー

昭和39(1964)年　中島町

9月20日、平和記念公園の原爆(げんばく)死没者(しぼつしゃ)慰霊碑(いれいひ)前を走る東京オリンピックの聖火(せいか)リレー。


消防(しょうぼう)出初式(でぞめしき)

昭和28(1953)年　基町(もとまち)

西練兵場跡(れんぺいじょうあと)の市民運動場で行われた消防(しょうぼう)出初式(でぞめしき)。威勢(いせい)の良いはしごのぼりを大勢(おおぜい)の観衆(かんしゅう)が見守る。

  

広島まつり

昭和28(1953)年　本通

昭和27(1952)年に始まった「広島まつり」。踊(おど)りやパレードが人気を呼(よ)んだ。写真は本通商店街有志(ゆうし)による仮装(かそう)行列(ぎょうれつ)「おいらん道中」。

広島復興(ふっこう)大博覧会(はくらんかい)

昭和33(1958)年　中島町

広島市制施行(しせいしこう)70周年を記念し、平和記念公園を第一会場、平和大通り東詰(ひがしづめ)を第二会場、復元(ふくげん)された広島城天守閣(てんしゅかく)を第三会場として開催(かいさい)された。

広島カープと旧(きゅう)市民球場

広島カープ結成(けっせい)披露式(ひろうしき)

昭和25(1950)年1月15日　基町(もとまち)

西練兵場跡(れんぺいじょうあと)の市民運動場で行われた広島カープ結成(けっせい)披露式(ひろうしき)に2万人のファンが集まった。

旧(きゅう)広島市民球場完成

昭和32(1957)年 基町(もとまち)

収容人員(しゅうようじんいん)18,000人、ナイター用照明(しょうめい)設備(せつび)を備(そな)えた旧(きゅう)広島市民球場が完成した。