はじめに
「はだしのゲン」は、広島市出身の漫画家中沢啓治氏による作者自身の被爆体験をもとにした漫画で、1973年(昭和48年)に連載が始まりました。作者の分身である主人公中岡元(ゲン)が、原爆で家族を失いながらも、戦後をたくましく生きき抜いていく姿が描かれています。
1945年(昭和20年)、ゲンが小学校2年生の時でした。いつもと同じように学校へ向かったゲンの頭上で原子爆弾がさく裂しました。それまでの彼は、空襲におびえ、食べるものにも不自由する生活であっても、家族に囲まれた幸せな日々を送っていました。しかし、たった一発の原子爆弾が、彼から大切なものを奪い、過酷な人生を歩ませることになるのです。
企画展では、ゲンが目の当たりにしたこと、体験したことを紹介しながら、当時の子どもたちが戦時中どんな生活を送っていたのか、また、原爆投下によって、子どもたちに何が起こったのか、その一端を伝えたいと思います。
描かれたゲンの生きざま、原爆で亡くなった人々の遺品、施設で生活する子どもたちの姿などを通じて、彼らの人生を大きく狂わせた戦争や原爆の悲惨さと愚かさを知っていただき、平和の大切さを考える上での一助となれば幸いです。