原爆(げんばく)は地獄(じごく)だ。が、その原爆(げんばく)をもたらした戦争は、もっと恐(おそ)ろしい。『はだしのゲン』では、その戦争の本当の姿(すがた)を、つたえたかった。私(わたし)は、全力をふりしぼって『ゲン』を描(えが)いた。描(えが)きつかれて、弱気になった私(わたし)を、小さな読者が励(はげ)ましてくれた。 この絵本では、原爆(げんばく)投下(とうか)前後に焦点(しょうてん)をあて、その地獄(じごく)絵図(えず)を描(えが)いたが、原爆(げんばく)の恐(おそ)ろしさ、被爆者(ひばくしゃ)の悲惨(ひさん)は、その後の生活の現実(げんじつ)の中にこそ、より重くのしかかっていくのである。
1980年(昭和55年)8月1日 汐文社発行 「絵本はだしのゲン」作者あとがきより