文字サイズ
S
M
L
背景色

第13回 広島平和記念資料館展示検討会議要旨

1 日時
平成24年(2012年)11月19日(月)午前10:00~12:00

2 場所
広島平和記念資料館東館地下1階 会議室(1)

3 出席委員(10名)
今中委員長、大井副委員長、水本副委員長、石丸委員、宇吹委員、大澤委員、神谷委員、静間委員、坪井委員、賴委員

4 事務局( 9名)
平和記念資料館 前田館長、増田副館長、西本副館長、大瀬戸主任、落葉学芸員、福島学芸員
平和文化センター総務課 小松課長
市平和推進課  石田被爆体験継承担当課長、沖中技師

5 丹青社( 6名)

6 議題等
議題 「展示実施設計」の検討(ホワイトパノラマのデモの検討など)

7 公開、非公開の別
公開

8 傍聴者
報道機関8社ほか1名

9 会議資料名
第13回広島平和記念資料館展示検討会議次第
「広島平和記念資料館展示実施設計業務」検討資料

※会議資料は、広島平和記念資料館学芸課(広島市中区中島町1番2号:広島平和記念資料館東館3階)でご覧いただけます。また、議事録はホームページでも公開しています。

10 会議の要旨

《開会》
【事務局】
実施設計での展示検討会議の位置づけと開催予定回数、実施設計の委託期間と業者選定結果について報告。

【丹青社】
ホワイトパノラマ模型およびメディアテーブルについての説明とデモンストレーション。
*以下、デモンストレーション中の質問等

神谷委員
科学的な知見に関しても確認するのか。例えば、グラフに放射線量の単位が入っていないが、今後入れるのか。

丹青社
現在は入っておらず、解説原稿は仮の状態である。今後、委員の方に内容を精査頂きたい。
静止画だけではなく、アニメーションで動かしてみせることも可能である。

今中委員長
今日は、アニメーションの画像は投影しないのか。

丹青社
今回は、文字によるアニメーションを見て頂いている。

宇吹委員
音声を出すのか。

丹青社
音の干渉が起こるため、出さない予定である。

静間委員
写真はモノクロを使用するのか。カラーは使用しないのか。

丹青社
資料写真を使用し、モノクロもカラーもある。動画もある。

水本委員
他のミュージアムで同じような機器を導入している事例はあるか。

丹青社
大型のタッチ画面の導入事例はある。今回予定しているものはかなり大型で、ここまで大きいものはこれまでにないと思われる。
 
水本委員
テーブルの高さは、子ども向けには良いが、大人には低いのではないか。

丹青社
車いすの高さを考慮して、高さ70cmに設定している。

大澤委員
テーブル面は水平だが、傾斜させることはできるか。

丹青社
可能である。

大井委員
東館の展示壁面の前に設置される。テーブル1台につき、何人くらい操作することができるか。 

丹青社
現在の想定では、1台あたり16人である。

大井委員
アテンションは常に何らかの文字やCGを表示し、それに対する画面が切り替わるのか。

丹青社
そうである。文字、CG、写真等を見せることができるので、表現は柔軟に考えていきたい。

大井委員
現状は、アテンションの帯の色と、他の表示部分の色が、同じ色である。区別が付きにくい。これからの検討になると思うが、結構字も多い。どう扱って良いのか、初めての来館者でもすぐに把握できるような仕組みを入れた方が良い。
 
丹青社
了解した。タッチ式のため、「ここに触れて下さい」等の表示は必要と思われる。
 
静間委員
画面上下に文字があるが、両方とも必要なのか。

丹青社
画面の両側から見られるようになっている。アテンションは、メイン通路側から見る人が多いだろうと想定し、その向きにしている。

宇吹委員
モニターをまとめて1つの大画面になっていることのメリットを挙げると、どのような点か。

大井委員
大画面と、壁面展示を含めた全体を一望することか。大画面に人が集まり、隣合って使う。モニターを1台ずつ小分けにすると従来通りの展開になる。形態としても、見え方としても、従来の展開からは変わる。
 
大澤委員
2つのウィンドウが開くと、数人で見ると狭い。1つのキャプションのみについて画面に出すこともできるのか。6~7人で見る場合、選んだキャプションのウィンドウだけが画面一杯に広がり、他のキャプションは消えるような表現は可能か。

丹青社
可能だが、他のキャプションを検索しようとした人は、それが見られなくなってしまう。

大澤委員
1つの画面を何人くらいまで見ることができるか。

丹青社
実物大サイズで見て頂くと、小学生の場合は3~4人程度で囲んで見ることができる。

大井委員
アテンション1、2、3と、それぞれの項目の見え方が気になる。テーブルを見た時、小学生にもこの構造がわかるような色分けや、ブロック分けをもっと明確にした方が良い。
ビジュアル、デザイン的なことも重視してアテンションの帯からはみ出した処理もあり、魅力もわかるが、まず構造がわかって操作しやすいことが求められる。この段階ではまだである。これからの詰めが必要。

石丸委員
反対側から見るとどうなるか。分割はできないのか。同じものを皆が見るのか。
 
丹青社
同じものである。

事務局
次の画面を見たい人が触ると、見ている人がいても画面が切り換わってしまうのか。
 
丹青社
検索したい項目にタッチするとウィンドウが開く。見終わって「閉じる」のマークに触れるとウィンドウが閉じる。見終わった人が立ち去った後、別の人が改めてウィンドウを開いて見ることになる。
 
事務局
2画面しか出ないのか。4画面出せないか。
 
丹青社
技術的には、最大4画面まで表示可能と考えている。
 
事務局
4画面であれば、反対側から見る人も同じものが見られて合理的だと思われる。
 
丹青社
モニターは奥2台分で、反対側の人も同じものが見られる。
 
水本委員
画面を進んで階層を見ることができるのか。
 
丹青社
そうである。今回はサンプル画面を作成していないが、ウィンドウ内の「次に進む」マークで、次の階層を見ることができる。
 
大井委員
ウィンドウを閉じないで立ち去ると、そのままになってしまうのか。
 
丹青社
一定の時間が経つと初期画面に戻るような設定は可能である。
 
水本委員
ダークな色彩の画面だが、これが適切と考えているのか。
 
丹青社
検討中である。白地に黒文字の表示も可能だが、モニターは輝度が高いので眩しく感じる可能性もある。現状のような黒にするか、少しやさしい色にして図などのコンテンツが目立つようにするかである。 

事務局
東館の照度は、この現場環境よりも明るい。
 
石丸委員
アテンションは確定ではなく、もっと増やすこともできるか。
 
丹青社
確定ではなく、増減は可能である。
 
今中委員長
ホワイトパノラマ模型、メディアテーブルの説明とデモについてご意見を賜りたい。

*以下、デモンストレーションが終了した後の意見等

石丸委員
過剰な演出を避けると書いてある部分は、「映像演出」というより、「映像制作」の方針ではないか。P14では「制作」になっている。被爆前で、午前7時15分を取り上げているが、どのような意味か。
 
丹青社
時間は仮設定である。細かい精査はまだで、これからの検討となる。
 
石丸委員
7時12分に空襲警報が出され、人々は右往左往し、防空壕に入っていた人もいる。鳥の鳴き声を聞くことができる状況であったかどうか。7時15分は空襲警報がまだ解除されていない。平穏な市民生活という意味を持たせようとしているのだろうが、あくまでも戦時体制下の市民生活であり、不安な状況下で生活をしていたことを映像表現はできないであろうか。7時15分が何を意味しているかが問題である。
もう1点、模型の補足資料に写真があるが、いつの時点の写真か。また、いつの時点の模型を作ろうとしているのか。もともとあった新橋は原爆投下の3年ほど前の大洪水で流され、幅1mくらいの仮の橋が今の平和大通りより上流にあった。平和大通りはまだないが、この時は建物疎開をしている状況である。ここにかけられた橋はまだ工事中の橋で人は通っていない。8月6日が渡り初めの日に設定されていたようだ。その時に被爆に遭って焼失している。細かい事実関係を間違えないようにして欲しい。
 
丹青社
了解した。写真の日付は再確認する。7月25日米軍撮影の被爆前の写真を資料に掲載している。1枚の航空写真で直径5メートルの模型範囲をカバーしているのではなく、複数の写真を1枚にまとめた経緯があるようで、地域によっては撮影日が異なる可能性もある。現時点ではその精査ができていない。それも合わせて検討が必要である。
 
石丸委員
建物疎開により日々変わっていく。どの時点かを追及する人はいないと思うが、間違いのないようにして欲しい。
 
水本委員
パノラマ模型のサイズはどのくらいか。何キロ以内の範囲か。
 
丹青社
半径2.5km、直径で約5kmを表現しようとしている。
 
水本委員
被爆後の写真では場所を示すような、文字情報の表示は可能か。
 
丹青社
デモ作成時にも課題として挙げられたが、初めて訪れる来館者も多いことから、爆心地がどこになるかを示せないか検討中である。
もう一方での留意点は、滞留時間である。文字表現を増やすほど滞留する要素が増えてくるので、その兼ね合いを考えていく必要がある。

水本委員
バランスを検討して欲しい。爆心地がどこになるかや半径2km以内の壊滅したエリアを示すなど、いくつか情報を加えることは可能と思われるので、滞留を生まない程度に増やすこと検討して欲しい。
 
大澤委員
7時15分も含めてであるが、米軍の映像を初めて見たのは50年以上前の小学生の頃である。調査団が家に来て、被爆者の祖母に写真を見せて「あなたの家はどこでしたか」と聞かれ、米軍の写真を見て「うちの家はここで、ここで被爆しました」と祖母が言い、母も私もそこにいた。後で「アメリカはどこの家かもわかるくらい、かなり詳細に撮影しており、日本が勝てるわけがない」という雑談をしたのを小学生なりに覚えている。そういう意味で、被爆前の広島は、人道的な意味で普通に生活していたと同時に、被爆者の第一印象は「アメリカはこんなに調べているんだ」ということも考える人もいると思う。そこも踏まえ、被爆前の広島の示し方に反映できればと思う。
 
宇吹委員
カバーする範囲であるが、これまで直径5.5kmの模型で、救護所が含まれており、救援体制を語るのには良かった。都市が壊滅したイメージを説明できるものになれば良い。
 
静間委員
被爆前から被爆後に移り変わった時、一瞬にして破壊されたことの凄まじさを感じられない。立体模型で作られているが、残った建物はわずかで、ほとんどが焼失した。被爆後も建物が残っているのは違和感がある。そのあたりがもっと違いが出るようになれば良い。被爆者が描いた原爆の絵には意味があるが、写真と見比べてどちらが良いかも検討して欲しい。
 
大井委員
今言われたホワイトパノラマについてであるが、被爆前、被爆後の変わり方がやはり弱い。被爆前のモノクロに色を付けた画像の密度を上げて現実に近い表現が必要になる。被爆後の表現は、変化の度合いをもう少しうまく処理しないと、今回の映像を使った意味が薄れる。
模型サイズは80cm四方のサンプルだが、実際は直径5mもあり大きい。映像の密度をどのように上げるか。今回の模型は爆心地周辺であるが、広い範囲全体を近づいて見るので密度を上げていかないと効果が出ない。
文字情報に関しては、本日見たようなものであれば大丈夫かと思うが、絵の見え方についてはいくつか実験をしながら効果を検証するなど、もう少し注意深く検討した方が良いと思う。映像として薄い表現になる恐れもある。今までのパノラマと違って色々な情報を盛り込めるので、メリットはずいぶんあると思う。滞留に留意しながら、見せ方や短時間での映像ストーリーの展開について検討が必要である。

石丸委員
導入展示は、あくまで導入の役割を果たすもので、ここだけで完結しなくて良いとすると、本館や東館へ繋いでいくきっかけや疑問符というか、見ようという気にさせる仕掛けが欲しい。8月6日の広島だけで終わってしまうのは良くない。
 
水本委員
被爆前、被爆後で、どこが破壊されたかを見せることも必要と思う。ポイントは何かということに立ち返りながら検討する。上空から見ると、瓦礫なのか、建物なのか、わかりにくいこともある。水平方向で見た時に焼け野原の変化の方が大きい。垂直方向からだけではなく、どこが破壊されたかがよくわかるように示すことが必要。
 
坪井委員
今は入口、これからが中身の検討が出てくる。被爆、原爆に対して、最後に「原爆は要らない」という魂が来館者それぞれに入っていけば良い。そのためには、「どう思いますか」という投げかけがあった方が良い。これはこうだった、こうだった、とまとめても被爆者から見れば様々に違う。8月6日、8時15分などの事実はきちんとあるとして、全てを網羅して伝えることはできない。原爆の絵にしても、その一部である。そこで大事なのは「どんな魂を注ぎ込んでこの絵を描いたんだろうか」というのが出てこないと、資料館の価値はない。特に、放射線の問題において科学的なことだけを取り上げるのであれば、資料館は無くても良いと思う。館を訪れて「被爆前と被爆後でこんなに違う。どう思いますか」という投げかけも要ると思う。広島の資料館を見て、皆に「核兵器をなくさなければいかん」と思ってもらわなければいけない。
 
神谷委員
静間先生からもご指摘があったが、被爆前後の差がわかりにくい。建物を立体的に作って、その上に被爆後の写真を映しているので、なかなかイメージが出にくい。水本先生が言われたように、水平方向で破壊の実態をリアルに表現することもある。前後で世界が全く変わった状況を表現できるような工夫をして欲しい。建物の破壊で人々に一番わかりやすいのは原爆ドームの破壊であろう。今回見た限りでは、被爆前後の差がよくわからない。はっきりとわかるように作って欲しい。
 
今中委員長
導入展示は5分で、イントロとしての性格を持っている。イントロを見て本館・東館を見たくなるというのが皆の意見である。航空写真だけではなく、水平方向での破壊、一瞬の被害が希薄だと思った方もいた。事実関係については、先程出された7時15分への指摘など、シナリオを精査することが必要である。
資料館に魂を入れて感じ取ってもらうのが必要だというご指摘も出された。何もかもだとかえって印象が薄くなる。うまく緩急をつけながら再度皆の意見を入れたものを次回に反映して欲しい。

石丸委員
アテンションの一項目として、「よくある質問」というのを設け、それに対する回答が見られるようなこともできないか。堅い解説だけではなく、「皆はこんな質問をしているんだ」という、やわらかい項目があっても良いのではないか。キャプションなど、解説の内容はこの委員会で決めなくて良いのか。こういうシステムを作るところまで決めれば良いのか。この委員会の責任はどこまで問われるか。
 
事務局
デザインや大まかな作り込みのところである。それ以降、執筆に関することは来年度の委員会でお願いすることになる。特にお気づきの点があればご指摘頂きたい。
 
石丸委員
アテンションの項目づくりであるが、完全分類ではなく、少し広い範囲・領域まで含めたキーワードづくりにして欲しい。1つの項目にまとめてしまってそこを見ないとわからないのではなく、周辺領域をカバーするようなアテンションの考え方にして欲しい。
 
今中委員長
情報テーブルを見ながら様々な意見が出ている。今のご意見も含んで検討する。
 
【丹青社】
議題「展示実施設計」について資料に基づき説明。

【事務局】
東館地下1階、情報資料室の整備について説明。

今中委員長
第10回展示検討会議において、情報資料室の移転に関して委員から提案が出された。それに対して事務局で検討し、資料に結果をまとめたので報告してもらいたい。
 
事務局
情報資料室の位置を現在の展示室(4)に移してはどうかという提案について検討した結果、展示室(4)に新たに情報資料室に適した照明の設置が必要となる、展示室(4)と書庫を行き来するドアの設置が必要となるが、壁が耐力壁であるなど経費の増が予想される。そのため情報資料室の場所は現在のままとし、場所や機能を分かりやすく表示案内することとしたい。

事務局
資料3ページのマルチ翻訳システムについてご意見を伺いたいという説明があったが、それについて説明する。左側が言語とマルチ翻訳システム、右側が言語だけの展開である。事務局としては左のモニター入りの方がすっきりしていると考える。右側の4カ国語は雑多な感じがして情報量が多いように見える。言語は日英の2カ国語で、それ以外はモニターで見る方が良いと考える。
 
今中委員長
それを踏まえてご意見をお願いしたい。

宇吹委員
美術館、博物館でパネルの字数が多いと滞留の原因になっている。簡潔にするという話があったが、もう一つ付け加えて、字数も非常に少なくしてほしい、という要望がある。

坪井委員
細かい点まで知恵と労力を使っている。東館の資料10ページから展示候補があるが、どう考えても全部は入らないのではないか。非常に大事なことが沢山ある。全部取り上げるのは難しい。どんな問題に関しても、「詳しくはこちらへ」という案内が、資料館の図書室にでもできればと思う。候補に挙げられている以外の資料もある。できるだけ見やすくして、わかりやすく子どもの感性に訴えることで見てもらう。全部何もかも見られるのは、英知を養うにはもってこいだが、この資料館はそういうことまで全部をやろうとすると難しい。「特別に勉強したい人はこちらへ」という案内を考えてはどうか。
 
水本委員
4ページの資料館からのメッセージに該当するか、あるいは入口周辺での表示になるか、資料館の目的が「核兵器の危険性や被爆の実相を伝えるところにあること」を短く伝えられないか。平和都市建設法や、資料館の設置条例にある内容を、短くても良いのでどこかに示しておいた方が良い。つまり、戦争の文脈と一緒に伝えるのではなく、核兵器そのものについてであることをきちんと示す必要がある。
11ページ「戦前の広島」では、軍事施設があったことを客観的なデータ等により、事実として示す。余計な論争を避けるためには、どこかで事実を示す必要があると思う。
広島のまち全体がいろいろな形で平和や被爆被害について関わりがある。被爆者の手記は、追悼祈念館にかなりのデータが蓄積されている。資料館を見終わった後、追悼祈念館に寄る人は数パーセントくらいで比率はかなり少ない。資料館以外にも、関連施設があることを最小限どこかに示した方が良い。先程の戦前の広島については郷土資料館などにも資料がある。まち全体として平和の関連施設・情報があることが少しでもわかるような仕掛けがあった方が良い。
 
事務局
関連情報に関しては、12ページの情報コーナーで関連施設紹介を考えている。展示室に関連した詳細情報までをここで扱うかどうかは考えていないので、それは情報資料室での展開になる。
 
大澤委員
9ページの「心の傷を抱えて」と「後障害」が一緒であるが、大切なデータのことを一行くらい入れなければいけないのではないか。それは来年度の検討課題になると思う。「心の傷を抱えて」では、手記の紹介となっているが、2008年に神谷委員等により行われた広島市の原爆被害者のPTSD調査では6~7%の人が今も心の傷を抱えていることを伝える。レファレンスとしてはまた別にデータがある。どのデータを選ぶかがあるが、データも必要ではないかと思う。
 
宇吹委員
以前に出された話題であるが、入口ロビーに平山郁夫先生の壁画がある。入口脇に「希望」という像、ローマ法王碑、浜井市長の像がある。「希望」の像はどのような由緒があるかの説明がない。ローマ法王碑は杭谷一東の作であることを学生の卒業論文で初めて知った。どこかに書いてあるかと見たら、非常に見えにくいところに書いてあった。平山郁夫氏の絵は国際会議場にもある。国際交流というテーマなら、太鼓も含めて国際会議場の方がふさわしいのではないか。あるいは、色々なものの位置関係をもう一度整理をしておく必要があるのではないか。内部の解説の検討に入る前に、そのような議論が必要ではないか。
 
大井委員
展示スペースは一定の方向でまとめられているが、エントランスや動線が新しくなった時、この検討委員会で検討する内容から少し外れることになる。平和公園の入口としてのエントランスホールの考え方、整理は総合的に考える必要がある。今のご意見にあった色々な美術作品や記念碑的なもので言えば、平山郁夫先生の壁画は劣化が進んでいると思うが、国際会議場の壁画と対になっている。イサム・ノグチの平和大橋や西大橋などを含め、公園全体の構造に関わる設置のされ方になっており、平和記念資料館だけのことではないものもある。平和記念公園、文化財となった本館、東館、国際会議場という大きな構造の中でどうなのか、という点も別に存在する。その整理は展示検討委員会だけでは処理できないものが出てくる。逆に、資料館としてはそれを見せて、伝えていく機能の中で重要な場所であったり、整理しなければいけない場所に引っかどうかっている。どういう方向で検討すべきなのかは、検討委員会からの投げかけとして頂ければと思う。ここで話していても、なかなか解決できない問題である。
 
事務局
エントランスにある様々な立体物や制作物は、資料館の性質に沿うものであれば設置し、そうでないものはやや違和感があり、別の場所に移設するかを関連部署を含めて検討中である。広島市としてどう考えるかという全市的な位置付け、同時に物理的なスペースの問題がある。
 
今中委員長
大邱の太鼓は平和都市を意識して贈られたなどの意味性があって置かれているのか。
 
事務局
友好記念なので友好面であり、平和の意味もあるが,国際交流という意味性が強い。全くそぐわないので絶対に移動しなければいけない、というものでもない。
 
今中委員長
国際会議場にスペースがあれば、そちらに移設した方が良いのか。
 
事務局
そうであるが、設置できる適当なスペースが見つからないのが現状である。 

神谷委員
東館の展示は放射線の人体障害に関する展示はどこになるのか。
 
丹青社
10ページの「原子爆弾の脅威」の最後に、放射線被害の展示を設けている。
 
神谷委員
東館では学術的な情報を展示すると理解して良いか。
 
事務局
科学的知見を紹介することになるが、実際にはあまり多くの情報量を入れられない。
 
神谷委員
先程のディスプレイ等をうまく活用して、階層を深くして詳細情報を入れれば良い。
 
静間委員
本館を入ったところの「8月6日の惨状」で人影の石を展示するのか。
 
丹青社
展示室に入って一番初めに集合展示があり、レンガの壁や鉄扉など、都市の壊滅を表す資料と、人の被害を表す資料を集合的に展示している。ここでは細かい説明はせず、全体の被害を感じ取ってもらう。ここを抜けた後、資料を1点1点説明する個別展示を考えている。その中で、人影の石は集合展示に含むと意味が伝わりにくいという話もあり、個別展示で紹介することを考えている。
 
静間委員
本館を入ったところに設置する訳ではないのか。人影の石は、何が起こったかをうまく説明しないとわかりにくい。
 
事務局
6ページの右下になるが、本館の入口部分は直線的な通路空間となり、実物は置けない。
 
事務局
先程のホワイトパノラマで、被爆前・被爆後の対比が明確でないという指摘があった。模型の3分の2は被爆前の建物を立体化、3分の1は地形模型だけにしたものである。立体的な表現をしたものと、そうでない部分をご確認頂いた。被爆前後の比較について垂直方向のことを意識してご覧頂き、再度ご意見をお願いしたい。
 
今中委員長
文字数を増やすことと滞留時間の相関関係を踏まえて検討すること、また広島が軍都であったことは事実として提起し、解説版によって誤解のないようにする必要があるというご意見が出た。
関連情報の扱いであるが、東館で何もかもを勉強するということではなく、それ以上を求める人は情報資料室を含め、情報提供が必要ではないかというご意見、先程エントランスホールについては館長からの説明があった。
文字数と滞留はかなり重要な要素だと思われる。修学旅行生も多い。子ども向け解説を見たが、原爆の知識が十分でない人も訪れ、むしろ一般の市民がここに来て初めて原爆のことを知る施設でもある。これから来年にかけて文字解説も検討していく時期に入る。
館長の話を受け、再度デモを確認したい。

【丹青社】
ホワイトパノラマ模型およびメディアテーブルについての説明とデモンストレーション

丹青社
模型の左側3分の1が地形模型、残り3分の2が被爆前の建物を立体化している。先程、被爆前の建物に被爆後の映像が投影される違和感があるというご意見が出た。被爆前の建物模型の一部を取り外したので、もう一度ご覧頂きたい。
立体模型を残している部分は、被爆前の映像と相まって立体感が出ている。
 
神谷委員
被爆後も原爆ドームが残っているので、被爆前後の差が分かりにくい。
 
事務局
被爆後を基本にした方が良い。
 
水本委員
本川小学校のあたりはまだリアルである。焼け野原になっている。
 
丹青社
被爆前、被爆後の変化の表現についてはこれからも工夫する。ベースとなる模型は、建物がない方が表現しやすく誤解がないので、そちらの方で詰めていきたいがいかがか。
 
水本委員
建物模型があると、焼け焦げただけで建物が残っているように見える。
 
丹青社
川と陸の段差、橋の立体化は残すとして、建物の模型は削除して良いか。 

静間委員
元安橋はなくなってはおらず、爆風で両側に広がった。なくなっているように見えるので残った画像にした方が良い。
 
大井委員 
道路が白く残っている。道路として区別が付かないといけないがコントラストが強過ぎ、白過ぎる。余計にちらついて見える。道が白いせいで逆に整然として見える。もっと崩れている。
 
大井委員
被爆前の樹木の緑などの色合いは、もっと実際に近づけた方が良い。現在のものはリアルと言えない。この状態なら、モノクロの方が良い。表現に関しては相当考えた方が良い。
 
神谷委員
米軍の写真の鮮明度はどのくらいか。模型に映すとあまりきれいに見えない。
 
石丸委員
モノクロとカラーの転換は、短時間でできるのか。

丹青社
現在、その状態である。
 
石丸委員
モノクロとカラーの転換や、重ねることもできるのか。
 
丹青社
可能である。
 
石丸委員
カラーの方が実態がわかりやすいが、重ねる時にはモノクロにしたり、被爆後の写真は、もっと迫力というか、立体感を出すなど写真そのものの加工ができないか。
 
神谷委員
実際の写真はもっと鮮明に見える。拡大するからこのようになるのか。
 
事務局
本番ではもっと精度を上げることはできるのか。
 
丹青社
デジタル加工で工夫できると考える。
 
大井委員
パノラマ模型を展示する室内の壁面には、被爆後の象徴的な写真が設置される。
 
丹青社
人の目線の高さで見た被爆後の写真になる。没入感、被爆後の全体の雰囲気は伝わる。
 
大井委員
被爆前後の変化をつける工夫が必要。5km圏内の中では崩れていない建物や、樹木の緑も少しあるのか。そういう所もあるとコントラストがつきやすい。
 
丹青社
了解した。建物については被爆後に残ったものを模型化することで良いか。
 
今中委員長
言い残した点、特にお気づきの点があれば事務局にご連絡頂きたい。

【事務局】
今後のスケジュールを説明

《閉会》