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第3回 広島平和記念資料館展示検討会議要旨

1 日時
平成22年(2010年)12月3日(金)14:00~16:00

2 場所
国際会議場3階研修室(3)

3 出席委員(9名)
今中委員長、大井副委員長、水本副委員長、石丸委員、宇吹委員、大澤委員、神谷委員、坪井委員、リーパー委員

4 事務局(8名)
平和記念資料館 前田館長、杉浦副館長、山根副館長、大瀬戸主任、平田主査、落葉学芸員、和田主事、平和文化センター 三好総務課長

5 議題等
(1) 本館展示について
(2) 導入展示の構成について

6 公開、非公開の別
公開

7 傍聴者
報道機関10社ほか1名

8 会議資料名
第3回広島平和記念資料館展示検討会議次第
資料1 展示ゾーニング図
資料2 本館展示案
資料3 外国人被爆者、後障害に関する資料
資料4 導入展示の構成

※会議資料は、広島平和記念資料館学芸担当(広島市中区中島町1番2号:広島平和記念資料館東館3階)でご覧いただけます。

9 会議の要旨

《開会》

【議題(1) 本館展示についての説明】
【事務局】
本館展示構成について、資料1~3を基に、展示候補資料の画像をスライド上映しながら説明。

今中委員長
「本館展示」の事務局の説明に対して、御質問・御意見等あればお願いしたい。

石丸委員
前回の会議で配布された新聞記事に、平成3年の改装後の資料館の感想として、「怖い」、「正視できぬ」、「作り物のようだ」というのが三つ大きく出ていたかと思う。「作り物のようだ」というのは今回あってはならない。その意味で、ジオラマをどう考えるかが一つ大きな問題である。しかし、「怖い」という感想は、資料館の本質的な役割を考えると、当然という面もある。「正視できない」というのも人によってはあるかもしれない。このあたりをどう考えるかで全体の筋書きがある程度決まってくる。個々の問題は色々あるが、どのように捉えるか考えた方が良いのではないか。

今中委員長
「怖い」という部分は恐らくジオラマによるものが大きい。小学生は特にジオラマから目を背けるようなことがあった。現在の案ではジオラマは展示しないことにしているため、印象は変わってくるのではないか。

水本委員
先程提示されたやけどの写真も、人によっては残酷だと感じるかもしれない。しかしながら、実態を示すのが資料館の本来任務であるため、できる限り正確なものを展示した上で、もし残酷だと受け取る人がいれば、年齢に応じてなど、それらの人への配慮を後から加えれば良い。できるだけ正確に示せる資料を展示しつつ、一定の人を保護するという考え方が良い。最初から保護を前提にして生々しい資料の展示をしないと考えるより、年齢制限を設けたり、事前警告を与えるなどの方法をとれば良い。 
細かな部分で色々意見があるかもしれないが、①~⑥までの事務局案は、大筋としてうまく整理できている。東館で設けられるのかもしれないが、全体の被害の実態を示すため、最小限のデータを各々のゾーンで多少盛り込んだ方が良いのではないか。例えば、②「都市の壊滅・人の被害」であれば全体の死亡者数、③「救援・救護」であれば、市内に設置された救護所数など、各々の項目で必要に応じて、全体像を理解させる数字があれば入れた方が良いと考える。

今中委員長
一箇所ではなく各々の場所でか。

水本委員
数字を細かく入れる必要はないが、①から⑥までのゾーンそれぞれにふさわしいデータがあれば加えた方が良い。例えば、外国人被爆者についても、留学生の数など、数を補足することでよりリアルに伝わるかもしれない。米兵捕虜についてもかなり詳細に研究されているため、それらも盛り込んでも良いのではないか。

石丸委員
資料とは別にキャプションがつくのか。

事務局
もちろんキャプションはつく。

石丸委員
その中に色々なデータが出てくる可能性はあるのか。

事務局
今後検討していくことになる。

宇吹委員
現在の展示と比較して感じていることを述べたい。 ①「原爆投下・爆心地」で言えば、前回の展示替えの頃よりも写真の整理がかなり進んでいる。また、当時、原爆の絵については、「事実ではない」、時間が経ってつくられたもので、「生資料としては扱わない」という見解であった。他の資料と同様に使用できればストーリーが分かりやすくなると感じていた。今回の案で、原爆の絵が証拠資料として取り上げられており、現行の展示よりは随分分かりやすくなっている気がする。 
もう一つ付け加えるものとして、「時間」がある。6日、7日、8日と時々刻々の変化を整理してみたいと思った。その際、直後に書かれた文献資料が役に立つ。その資料とリンクさせればもう少し立体的に直後の様子が描けるのではないか。先程提示された案では、時期がバラバラであった。絵もしくは写真だけでも時間軸で並べてみたい。今であれば聞き取りも含めて資料が整理されているため、以前とは違った使い方ができるのではないか。 
②「都市の壊滅」については、全市が破壊されたというイメージは伝わってきたが、実際、被爆者と多く話してみて、己斐、宇品、段原、牛田地区など地域によって差があると聞いた。この地域差が今の案では伝わりにくい。都市の壊滅と言葉で言うだけではなく、もう少しきめの細かい都市の状況、地域の状況を示せるのではないか。

今中委員長
それは写真を生かしてということか。

宇吹委員
資料と証言の組み合わせでできるのではないか。例えば、救援物資が多く届いた地域とそうでない地域、6日に食料が届いた地域と7日に届いた地域などの証言がある。これらを地域ごとに分けられないか。これは、③「救援・救護」の話ではあるが、都市の壊滅のあり様が地域で異なるのではないか。

坪井委員
時間的な問題をどのように扱うかである。年齢別の資料の展示という案は、時間的なものをよく考慮していると感じた。時間の広がりをどのようにつかむかである。広さと大きさ、空間的なものと時間的なものが入っていなければならない。要所要所には垣間見えるが、解説する側がどのように解説するかにかかっている。 
写真についてであるが、被爆直後の爆心地付近の写真には人が写っていない。しばらく経過しなければ人は写っていない。被害の状況と言っても、人と建物両方写っている写真はかなり後のことである。似島の治療の問題など、広がりがどこでどうなったかが大事ではないか。 
また、「怖さ」の問題であるが、先程提示された写真の幾つかは、国連で原爆展を開催しようとした際、むご過ぎるという理由で拒否され、削ってやっと開催できたという経緯がある。この資料館は世界を対象に考えなければならない。単体でインパクトのある資料もあるが、大きな人の死を展示することが大事である。それには、被害の大きさ、広さが関係してくる。この観点で言えば、今回の案はまとまってきていると感じた。

宇吹委員
⑥「被爆者の今日までの歩み」について、前回の会議で、特に外国人被爆者、朝鮮半島出身者の被爆者が大きな問題になっていたと思う。資料があれば展示できるが、資料がなければ展示できないということで、資料はないのではないかと思う一方、展示しないのは良くないというジレンマがあった。しかし、原爆被害の認識の展開という視点を入れれば良いのではないか。具体的には、報道機関が原爆をどう報道してきたか、平和教育で何を原爆の被害として教えてきたかということを整理すれば、朝鮮半島出身の被爆者の問題も取り上げることになるのではないか。このような視点で行えば、多くの被爆者、原爆孤老、小頭症、佐々木禎子さんなど時代によって報道機関に大きく取り上げられたが現在資料館で取り上げられていない問題も浮かび上がってくるのではないか。報道機関関係の協力が得られれば展示が可能ではないか。

今中委員長
今の要素は東館ではなく、本館での展示の話か。

宇吹委員
本格的に東館で展示するにしろ、基本的かつ重要な問題を落とさないのであればここで入れても良いと考える。

大井委員
今回、本館の展示コンセプトを「人間の視点からの被爆の実相」を見つめるということで大きく変更したが、これをどう組み立てていくかである。展示する素材を事務局でまとめてもらったが、実際に具体的に空間の中に入れていくと色々な問題が出てくるのではないか。テーマや展示内容は今後加えたり、削ったりすることになるだろうが、ひとまず、具体的な空間の中に展示の構成を含めてはめこんでいく作業を早くした方が良い。
原爆の絵の扱いであるが、今の案では、各項目の代表的な資料として使われている。被爆の実相を原爆の絵で見てもらうということになっているが、これらの絵は複数点並べて初めて効果が出るものでもある。単体としてまた説明資料として扱うことには問題が生じるかもしれないので、考えた方が良い。 
⑤「魂の叫びの場」は、コンセプトや内容などもう少し見せ方を考える必要がある。「魂の叫びの場」というテーマが人間の視点からの展示であるとすれば、「魂の叫びの場」は本来本館すべてにかかわってくる話であると思う。
「観覧後の心情に配慮した場」の設定が、本館展示の構成及び表現とうまくつながっていなければならない。具体的な案に示していく作業を早くした方が良い。

今中委員長
事務局の①~⑥までの説明を聞いたが、⑤「魂の叫びの場」で布靴、弁当箱、ワンピースなどの展示が「魂の叫びの場」とどうイメージ的に結びつくのかという問題もある。今回、事務局が大きな二本柱に分けて展示する資料の候補を出したが、スライドを見ただけでは展示手法や空間のイメージなどは、よく分からない。専門の業者をなるべく早く正式に選定するか、もしくは事前に知恵を拝借することにより、皆がすぐ分かるような資料ができるはずであるので、その作業をなるべく急ぎたい。

坪井委員
広さの問題で言い忘れたが、説明文で町名を出す際、爆心地からの距離が問題となってくる。例えば、似島だけでは、人々はどこに似島があるのかわからないため、爆心地から約8kmという表現が必要になってくる。すべてに入れる必要はないが、町名を表記する場合は、爆心地からの距離を入れると被害の広さや全体像が伝わりやすい。

石丸委員
① 「原爆投下・爆心地」では後ろから来る人の流れに押されてどんどん前に進むことになり、②「都市の壊滅・人の被害」で、人は立ち止まることになる。展示技法的に言えば、現在の模型のように、要人が来館した際に説明するような、ポイントになる資料が、②に必要になってくる。また、少しの時間であれば立ち止まっても問題のないような設計が必要だと考える。 
後障害に関しては、専門家が展示にふさわしい資料を検討することができないか。このスペースではこのような展示をすると良いなど、専門家から独自の意見を出してもらうことはできないか。

神谷委員
今までの意見を踏まえてコメントしたい。まず、石丸委員が提示したどこまでありのままに展示するかという話であるが、資料館の使命は原爆の非人間性、人間の破壊、社会・都市の破壊を多重的な視点から示すということが大変重要だと考える。それに対し、精神的に強い影響を受ける人がいれば、水本委員が指摘するように、別の手段を考えれば良い。基本的には原爆被害の実態を示すことが重要である。実態を示すには、時間的・空間的な展示が、全体像を示すことができる。そのような視点が重要である。 
前回、後障害についてもう少し展示した方が良いと提言したところ、その後、資料館の方に施設を訪問してもらい、資料を集めていただいたことに感謝申し上げる。資料3に、更新後の展示、展示手法とあるが、内容自体は的確なコメントであり、このような内容で展示してもらえれば良いと思うが、具体的に何を展示すれば一般の人に原爆の影響や障害の深刻さが伝わるかということは、実際に資料を見ないと分からない。専門家に意見を出してもらう、具体的な作業をしてもらう場があっても良いと考える。今回、後障害に関する資料としては、一つグラフがあっただけだが、今後具体的な資料を出して、より後障害を説明できるようにしていく必要がある。 
急性障害の資料が意外と出ていない。「時期別の急性障害」という図表はもう一度作成し直した方が良い。今日提示された資料では放射線の急性障害は伝わらない。東海村の臨界前被ばく事故で経験したが、まさに外部被ばくであり、原爆の放射線の影響と同じであり、本当に深刻であった。今の資料ではその深刻さを表現できていない。もう少し資料を探し、検討した方が良い。

今中委員長
放影研、原医研、原対協、日赤の4機関が中心となり、神谷委員がリーダーシップをとり資料をまとめることは可能か。

神谷委員
可能である。

今中委員長
では、事務局にはその方向性で検討してもらいたい。

水本委員
大井委員の指摘にあったように、⑤「魂の叫びの場」は基本計画作成の段階では、展示全体が魂の叫びを反映するというもので、①~⑥の中のある特定のゾーンが「魂の叫びの場」という整理ではなかった。本館全体が「魂の叫びの場」という捉え方の方がより正確なのではないか。⑤の内容においては、むしろ原爆被害の無差別性を各年代別、外国人被爆者などで示しており、そのイメージで言葉によって表現した方が良いのではないか。 
外国人の被害に関して、宇吹委員が指摘したように、朝鮮半島出身者の被爆者の資料がなければ本館での展示は難しいかもしれない。事実としては、当時、5万人前後が市内におり、被爆者として実際に存在している。ハプチョンにも大勢の被爆者がいる。今手元にある資料だけでなく、存命の被爆者が手記、絵、写真、資料などを所蔵しているかもしれないため、追跡調査をするべきである。また、朝鮮最後の国王李垠殿下の甥の李鍝公の被爆のことも朝鮮民族の象徴的なエピソードとして何らかの形で含めることもできる。 
現在の核の怖さを今の学生に説明する際、広島に落とされた原爆は 16ktで、半径2km圏内が壊滅し、14万人が亡くなったと説明することが教育的な中身として重要だと考えている。現在の核弾道は200kt以上のため、半径2kmの壊滅では終わらない。最も小さい広島原爆のデータを大まかなイメージとして盛り込みながら教える方が、今の核問題を絡めていく上で重要だと考える。

今中委員長
導入展示の議題もあるので十分審議できたかどうか分からないが、そろそろ次に移りたい。

坪井委員
在外被爆者についてであるが、私自身北朝鮮を二度訪問したことがある。彼らも広島で被爆した同じ被爆者であり、今も様々な交流を続けている。南方特別留学生については、食堂で一緒に食事をしたこともあり、格別な思いがある。被爆した鉄瓶が候補資料として挙がっていたが、万代橋近く左岸の土手に彼らの碑がある。展示資料として入れる必要はないが、鉄瓶を展示するのであれば、碑の写真を撮り、資料館に置いておいてもらいたい。

今中委員長
大きなテーマの二項目目があるので、一項目目の議論はこの程度にしたい。本館展示については、提言を含めて色々出たので、事務局で受け止めてもらいたい。具体的には、なるべく早く専門業者に実際に案を図面におこしてもらう、後障害・急性障害に関する提言をとり急ぎ対応することとしたい。 
「導入展示」に関する、意見交換に入りたい。今回の案では、本館にはパノラマ模型を展示しないことになっている。一瞬で広島が壊滅したことが分かる資料であり、スペースがあれば展示した方が良い資料である。外国の要人が来館し館長が説明する際も、報道機関の撮影スポットとなっており象徴的な場所でもあるが、案としては東館からも消えている。導入展示で小型化してでも入れるべきかどうかも含めて、検討してもらいたい。導入展示の構成について事務局から説明してもらいたい。



【議題(2)  導入展示の構成】
【事務局】
導入展示の構成について、資料4及び基本計画に示された図面をスライド上映して説明。

今中委員長
今の事務局の「導入展示」の説明に対して、御意見・御質問があればお願いしたい。

水本委員
確認であるが、戦前の広島の街について東館で詳しく取り扱うということは基本計画に入っていたか。

事務局
そのままかどうかは別にして、圧縮した形で東館に入れる予定である。

水本委員
戦前の市民生活の中に軍の機能があったということを短くでも入れておいた方が良い。焦点を当て長々と説明する必要はないが、広島にもそういう機能があったということを紹介するべきである。

今中委員長
全体の観覧時間が平均して45分であるため、基本的に導入展示の観覧時間は5分というのが上限である。また、導入部分で詰まると、修学旅行生が来た際混雑するため、滞留させない必要がある。そして、パノラマ模型を展示するかどうか。展示するのであれば場所的にかなり制約されるため、網羅したものをいかに取捨選択するかという問題になってくる。これらの点を考慮に入れて御意見をお願いしたい。

大井委員
展示項目について、「被爆前」、「被爆後」、「原爆投下」という項目で展示することは、できるだけ短時間で導入部分において資料館の構成を把握するという意味においてはこれで良いと思う。内容に関してはもう少し精査してもらいたい。導入のテーマとしては「広島と原爆」というより、可能であれば「平和記念資料館からのメッセージ」とし、展示の内容を大きく分ければ、戦前の豊かで穏やかな市民生活と原爆投下、廃虚のヒロシマとすることとし、テーマとしては資料館からのメッセージという方が良いのではないか。 
パノラマに関しては、導入展示に入れるのは物理的に難しいように感じる。3階の導入展示の図面で、②の上(北側)のスペースは、入ってきた人と、本館から戻ってきた人が交差する場所でもあるが、あそこを広く取り、有効利用することを考える方法もある。本館を戻った後でパノラマを見ても問題ないため、②の上の無駄な空間を使う手を考えても良いのではないか。ただ、人が交差するので難しいかもしれない。

今中委員長
現在、ソファーが置かれている辺りを活用できないかという意見をいただいた。

大井委員
導入の部分は、エスカレーターで上がり、細い通路を通っていくので、ここにパノラマを無理矢理入れるのは難しい。石丸委員の提案のように、本館の②「都市の壊滅・人の被害」のところに入れ、たまりをつくるという手もある。専門業者を入れてよく案を練った方が良い。 
1階のフロアの玄関口からエスカレーターへと進む入口の空間は、全体が出口であり入口である。公園と一体とし、公園から見ても出口であり入口でもあるということが分かる構成をつくっていくべきである。導入部分、東館、本館の3つのコンセプトをできるだけ明確に立体的かつ空間的に見せることが一番である。その中での導入の場所である。

石丸委員
一番難しいところであるが、導入展示は、物の展示よりも、意味の展示・展開の場所としてもっと深めなければならない。導入展示は視覚だけでなく、色や音も含めてもっと深めなければならない。音についても、NHKのドキュメンタリー番組で使用されているように広島のイメージを誰かに作曲してもらい独特な雰囲気づくりをするなど、その辺りから導入展示について踏みこんでいかなければならない。物の展示の議論は最終的には必要であるが、当初の導入展示の意図と違うのではないか。

リーパー委員
導入展示で廃虚を見せるべきではないと考える。導入展示はショックを与える場所ではない。最初に資料館の目的、展示の内容を含めたメッセージを紹介し、その後、被爆前の広島について、子どもが川で泳いでいる写真など人々の暮らしを示す写真を多数展示し、当時広島には多くの人々が生活し、繁栄していたという印象を与える。その後、原爆の模型を展示し、原爆の構造、テニアン島からの飛行や投下の経緯を説明し、8時15分までを導入展示で描く。8時15分の後は本館で受け入れてもらうことにする。本館は繁栄していた町が一瞬で破壊されたというショックを与える場所であると考える。 メッセージの内容についても少し述べたい。アメリカで原爆展を行った際、最初の頃、特に年配の方が真珠湾攻撃のことや、日本軍の加害行為について述べていたが、証言者の話の前に、「私たちの来た目的は、文句を言ったり、謝罪を求めたり、誰が責任を負うべきかを決めるためではなく、将来に対する警鐘を鳴らすためだ」と言うようにした。原爆の被害は、過去の出来事ではなく、まだ解決されていない問題であり、戦争をやめなければ同様のことが起きるというメッセージを強く訴えることが最も大事だと感じる。

今中委員長
事務局案の「広島と原爆」のコーナーを「戦前の市民生活」、「原爆投下」、「廃虚」の3項目で構成するというコンセプトを変えようという提言であった。8時15分以降を本館展示で示し、その前までを導入展示で展示すれば良いとの案だが、これまで、導入展示は、資料館の全容をコンパクトにかつ短時間で理解できる場という考えで進めてきた。リーパー委員のこの提案をどのように考えるか。

大井委員
入口からエスカレーター部分までは距離が長いため、リーパー委員の提案を、歩きながら感じてもらえるような手法にすることで取り入れることも可能かもしれない。導入については、色や音の部分もあるが、導入のスペースを3階の部分だけでなく、入口部分から資料館のメッセージを見せるという方法も考えられるのではないか。現実的な話に置き換えていかなければ、机上の議論であれば前に進まない。

大澤委員
原爆について体系的にある程度理解している人であれば先程のリーパー委員の提案も良いと思うが、長年様々な人を案内している経験から、導入部分で大局を掴むという現在の案が良いと思う。水本委員が指摘した2km以内の被害のこと、坪井委員の爆心地からの距離についても、すでに現在展示されているが、意識して原爆の被害を掴ませることが必要である。重要な部分や資料館のメッセージを導入部分で展示するのが大切である。また、どのように具体化すれば、来館者により伝わるかということを次に考えていかなければならない。具体的にどの映像や写真を使用するか、どの文献の文字を入れるかという議論である。

水本委員
導入展示と本館の入口が上手く繋がっていく必要がある。前半の議論で言い忘れたが、資料2の①「原爆投下・爆心地」の展示ストーリーとして「郊外から爆心地へ向かう」とあるが、「郊外から」という言葉を入れることでかえってインパクトを弱めていると感じる。「今から爆心地へ向かう」というコンセプトであると思うが、直前のイントロである導入展示を見た後、今から当時の8月6日の爆心地へ向かうのだと上手く繋がるコンセプトにする必要がある。世界中から訪れた来館者が広島のとある郊外に降り立ち、爆心地へ向かうわけではないため、「郊外から」という言葉は省いた方が良いのではないか。 リーパー委員が指摘する廃虚についての展示であるが、最近制作されたドキュメンタリー映画等は、通常最初の3分から5分は導入があり、核心の部分もわずかであるが盛り込んでいるものが多い。導入展示で全く廃虚に関する展示をしないのではなく、廃虚の展示の要素を入れた方が、より早く本館に行って見なければという気持ちをわき立てるのではないか。どのくらい比重を置くかの問題はあるが、何かしら本館での展示を暗示させる廃虚の展示があっても良いと思う。 
視聴覚の効果について、現在、東館に入ってすぐの導入部分で音楽が流れていると思うが、今のは良い音楽だと考え
る。空間の雰囲気を決めてしまうため、上手く選び、音楽と映像とセットで人を滞留させない方法で考えた方が良い。自分自身、現在の導入展示の中身よりも音楽が頭に残っている。エッセンスを盛り込むが、次に進んでもらうという具体論で話をした方が良い。

石丸委員
「導入展示」については色々な考え方がありそうなため、徹底的に抽象化するという案もあれば、リーパー委員の廃虚を抜くという考えもあり、今のままでいくという考えもあるかと思う。それを具体化の方向で展開できないか。

今中委員長
複数案を考えるということか。

大井委員
今の段階であれば、石丸委員が提案にするように、幾つかある案から良い案を選ぶというのが恐らく真っ当な進め方だと考える。

今中委員長
そういう方向性で良いか。

坪井委員
実際に物事が動き始めた際にどのように感じるかを想像しなければならない。今日提示されたような写真は被爆者には問題にならない。原爆の残虐性は静止した絵でも描けるものではない。本来は来館者にショックを与える必要がある。入館前にはしゃいでいた人が出る時には黙って考えこむようなぐらいで良い。きれいごとでは済ませない方が良い。

石丸委員
是非資料館のメッセージに入れるのが良い。

今中委員長
基本計画の際にも、こぢんまりまとまり過ぎると昔の方がインパクトがあったということになるという坪井委員の指摘と同様の意見が出ている。

リーパー委員
文化の違いかもしれないが、時間的にまっすぐなストーリーを考えている。まず最初に結果を見せるとショックを与える力が弱まるのではないかと懸念している。残酷な武器が製造され、この武器により素晴らしい街がこのように破壊されたというストーリーである。その後、広島で何が起こったかを展示する。戦闘員、非戦闘員を区別しないこの武器の使用は犯罪であり、廃絶すべきであり、かつ現在の核の威力は比較にならないぐらい大きくなっていて、10発でも使用すれば核の冬に突入するというようなストーリーを紹介し、このような核は廃絶しなければならないというメッセージを出すことが一番大事ではないかと考える。

大澤委員
展示を具体的にどのようにすればメッセージがよく伝わるかということを議論しなければならない。主な部分を導入展示でする案もあり、リーパー委員の案もあるが、導入で少し廃虚の展示をしたからと言ってストーリーが全て分かるわけでなない。

大井委員
被爆後を導入で展示するかどうかの議論の前に、平和記念資料館のメッセージ・意志を導入の部分で明確に来館者に伝えるということが必要なのではないか。

大澤委員
言葉でメッセージを出すのは良いが、修学旅行の子どもは読まない。読まなくても視覚を通してメッセージを理解できるようにした方が良い。視覚や音も含めて、より深く勉強したいという意欲をかきたてる展示にするのが良いのではないか。文字がなくても、映像や物の力でそれは可能ではないか。

大井委員
もちろん、視覚的な部分で伝えられるのが最善である。

大澤委員
専門業者が行えばできるかもしれないが、5分で観覧させようと思えば、エッセンスだけ導入展示で説明するのが良いのではない
か。

リーパー委員
要人の案内をする際、東館のパノラマを見る心の準備が出来ていないと感じることが多い。
活気あふれる戦前の広島の様子を見た後、廊下を歩き、きのこ雲の写真を見れば、これから何かがあると心の準備ができる。そこで、パノラマ模型で一瞬に破壊された広島を見て、原爆の残虐な影響を見れば、気持ちとして受け入れやすいのではないか。

大澤委員
受け入れやすいかもしれないが、ショックを与えてもいいのではないか。

リーパー委員
準備が出来ていない時に少しショックを受ければ、人は心をコントロールしてしまい拒否してしまう。本当のことを見ていない、感じていないのではないかと、案内をしていて感じている。

今中委員長
事務局の構成案は、2年にわたり議論した基本計画を基にしている。事務局案ではあるが、検討会議の意見を集約したものでもある。しかし、この案からずれてはいけないというものでもない。今日の意見を踏まえて複数案を考えてもう一度議論するか、次の会議で導入展示に関する議論を深めるか、事務局が複数案を提示するのが良いのか、どのように考えるか。
以前、専門業者が提示した展示案を見たが、プロの仕事だと感じた。なるべく早くこの会議で固めたものを具体的に絵にしてもらった方が分かりやすい。 
別の角度からの意見も出たのでその案を入れて次回も導入展示について議論するのが良いか。

水本委員
今日の意見を集約できていないため、次回にもう一度導入展示とそれ以外のゾーンを話し合うのが良いのではないか。

今中委員長
導入展示は一番大事な部分であるため、次回も導入展示を議論することで構わないか。

大井委員
しっかり時間をかけるべきだし、かけたいと考える。

今中委員長
次回、前半で導入展示の方向付けをし、その他の本館の部分についても固めるということにしたい。また、5回目以降をどうするかということも諮りたい。

事務局
今日の議論は今後具体的にどう形作るかということと密接に結びついているため、進め方をどうするかを事務的に検討し、次回の会議の内容・時期について委員長・副委員長と相談したい。次回、東館について議論するのか、色々な選択肢も含めて考え相談し、委員の皆様にお伝えしたい。

今中委員長
そのような事務局の結論で問題ないか。
(委員からの異議はなし)


【事務局】
今後のスケジュールを説明

《閉会》