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3-1-2-2腕時計
名川敏子さん(当時22歳)は、幟町の自宅で被爆し、倒壊した建物の下敷きとなりました。出掛けていた妹が戻り、崩れた建物に向けて「姉ちゃま、姉ちゃま」と呼びかけましたが、返事はなく、火の手が迫ってきたため、やむなくその場を離れました。
火災がひどく、すぐに戻れなかった父親は、日も暮れた頃に自宅の焼け跡から白骨となった敏子さんを見つけました。
この腕時計は、敏子さんの遺骨の腕の下にあったものです。針は敏子さんが炎に包まれたと思われる1時ごろを指して止まっています。
父親・義人さんの手記より
あたりを見ると座敷の中央と思われるところに白骨が横たわっているではないか。直ぐに「敏子だ」と気付いた。
あぜんとして一人で泣けるだけ泣き、そして唯々冥福を祈るのであった。
名川敏子さん
名川淳史提供
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