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第12回 広島平和記念資料館展示検討会議要旨

1 日時
平成24年(2012年)9月24日(月)午後2:00~4:00

2 場所
広島平和記念資料館東館地下1階 会議室(2)

3 出席委員(10名)
今中委員長、大井副委員長、水本副委員長、石丸委員、宇吹委員、大澤委員、静間委員、坪井委員、賴委員、リーパー委員

4 事務局(9名)
平和記念資料館 前田館長、増田副館長、河村課長補佐、大瀬戸主任、落葉学芸員、福島学芸員
平和文化センター総務課 小松課長
市平和推進課 石田被爆体験継承担当課長、沖中技師

5 丹青社(5名)

6 議題等
議題 「展示実施設計」の検討(テーマサイン・ゾーンサインの検討など)

7 公開、非公開の別
公開

8 傍聴者
報道機関5社ほか1名

9 会議資料名
第12回広島平和記念資料館展示検討会議次第
「広島平和記念資料館展示基本設計業務」検討資料

※会議資料は、広島平和記念資料館学芸担当(広島市中区中島町1番2号:広島平和記念資料館東館3階)でご覧いただけます。

10 会議の要旨

《開会》

【事務局】
実施設計での展示検討会議の位置づけと開催予定回数、実施設計の委託期間と業者選定結果について報告。

【丹青社】
次回以降の検討内容について説明。

今中委員長
ホワイトパノラマ模型は映像の内容まで制作するのか。

丹青社
一部であるが、実際に近いかたちで見えるものを制作する。

大井委員
スケールは実際に制作するものと同じサイズか。

丹青社
そうである。実際の模型と同サイズで原爆ドーム周辺のサンプル模型を作り、そこに映像を投写する。

大井委員
映像投影の際、部屋を少し暗くする必要があるのか。その条件も併せて考える必要がある。

丹青社
そうである。東館3Fは天井が低く、実際にはどの程度の明るさになるか、効果がどの程度出せるかを検証する必要がある。

今中委員長
ホワイトパノラマは目玉になる。(デモを行って)委員からの要望が出れば、丹青社がそれを反映して進める。


【丹青社】
議題「展示実施設計の検討」について資料に基づき説明。

石丸委員
サイン計画とコーナー解説をどのようにするかの方針は、基本設計で触れた経緯があるのか。方針をもう一度示し、今回はどういう選択肢があり、何が課題か、例えば中学生がわかるようにしようとか、高校生以上の大人向けにするとか、体言止めにするとか、呼びかけ調にして「一緒に考えよう」というスタンスにするか。上から目線の解説はないと思う。サインや解説文をどのように書き上げるのか方針は決まっているか。

丹青社
各コーナーのくくりや小項目のくくりを明確にして、資料配置との調整を図りながら整理をしている段階である。今回議論いただく趣旨は、各パネルに書かれる文章内容ではなく、サインやコーナー解説をどの場所に設置するかは場所が限定されるため、くくり方がこれで良いかどうかを議論いただきたい。基本設計をベースにして見直しを図ったが、もっとテーマを集約した方が良いか、それとも増やした方が良いか等についてご意見を賜りたい。サインやコーナー解説の数や位置について議論をいただき、展示配置を検討する手がかりにしたい。
解説原稿の内容は、今後の検討事項と考えている。

石丸委員
了解した。キャプションなどはそうであろう。コーナーの項目はこれで決定なのか。

今中委員長
それを本日議論いただく。ゾーンサインやコーナーサインについてご意見があれば。

坪井委員
何カ国語で表記するかも検討して良いと思う。中学生が対象か、それよりも上か下か、明るいか暗いか等は、我々よりも資料館の担当の方が、来館者からよく聞いていると思う、子どもが一気に来場したらどうなるか等は、よく知っているだろう。そういう面は館に任せて良いのではないか。実際に、具体的に子どもから大人までの雰囲気を把握していると思う。ただし、大きな所は我々で明確にする。今回出されているものは、いろいろ苦労していることがわかる。ここから先は譲りたいと思う。

今中委員長
事務局と丹青社で詰めた内容について検討会議で意見を賜って、微修正をした方が良い点はそれを反映する、というのが基本になるだろう。坪井委員のご意見を踏まえつつ、なお気づかれる点もあるかと思う。委員の方が気づいた点を挙げていただければと思う。

静間委員
本館の実施設計の「2.放射線の被害」は、基本設計でも大きく出ている。「4.生きる」に後障害が含められている。後障害は「2.放射線の被害」の内容だと思うが、2に入れずに4にいれたのはどういう考え方か。

事務局
基本設計段階では、放射線被害のところで急性障害までを扱い、時系列的に被爆者の戦後の苦しみの中で後障害も紹介する、という意図である。その意図を踏襲している。

静間委員
これは、現在の展示でも「少ないのではないか」という意見が出ている。神谷先生も交えてこれから詰めるのか。

事務局
具体的な原稿の書きぶりを含めて検討する。

今中委員長
「黒い雨」の小項目を立てたのは、これからも(放射線の影響が)継続的な課題になっていくので、良いと思う。

宇吹委員
実施設計で「生きる」に変わって具体的になり、良いと思う。後障害が最初にあるとおかしいのではないか。様々な病気を抱えて戦後歩んだ被爆者像は、「後障害」というタイトルではなく別の適切な言葉で設けられないか。「心の傷を抱えて」は、「黒い雨」を入れたのと同様に、良いと思う。
「家族を失って」は原爆孤児・孤老を念頭に置いているのだろうが、もう一つ原爆直後に広島市内から離れていった人口の移動がある。地域の破壊と復活はホワイトボードで描かれると思うが、広島に来て知ってもらいたいこととして、被爆直後に既に日本全国に被爆者が移り住んだことがある。戦後の長い流れで見れば、海外の被爆者などがあり、東館では個人としてではなく社会問題として取り上げることになるのだろう。広島以外の被爆者を取り上げるようなコーナーが立てられていれば、そこに様々な個人の問題を含んで紹介することができる。

水本委員
「2.放射線の被害」でも後障害について触れた方が良いのではないか。「4.生きる」は被爆者が主人公で、被爆者にとって、どのように障害を抱えてきたかという視点である。整理すると、2では後障害のメカニズム、4では障害を抱えて不安の中で生きていることに触れることになるのではないか。検討の余地があると思う。

今中委員長
「後障害」を「放射線の被害」に含ませるのか。

水本委員
メカニズムとして、後障害にはどのようなものがあるかはかなり整理されているので、2にその例を入れた方が良いのではないか。4では、そういう方々がどのように生きたかである。そのように整理した方が明確になる。放射線による被害にはどのようなものがあるかは、今日関心を持たれている点でもある。急性障害だけを入れる趣旨はわかるが、2と4の両方にだぶらないように分けることも可能と思う。

大澤委員
「放射線の被害」に急性障害も後障害も入れるとしたら、何年か後に白血病やがんになる等の身体疾患を伝えて、「生きる」の後障害ではもっと詳しく、不安を持って生きる心の面を伝えるのか。

事務局
具体的な書きぶりまで示せない段階で、いろいろなイメージを持たれると思うが、「放射線の被害」では事象として「急性障害が終わった後に、そのような後障害が現われるようになった。それも放射線の影響である」というような触れ方になるだろう。

大澤委員
戦後67年が経過し、今現在までの研究発表成果を入れるのか。

事務局
それほど詳しく入れることは難しいのではないか。

大澤委員
それほど詳しい触れ方ではなくても、二世の問題までは入れる。

事務局
それを入れることもあると思う。被爆者の苦しみは「被爆者」の中で触れる。白血病やがんの具体的な事例は「被爆者」の中で触れることになる。

大澤委員
がんを発病することについては、「放射線の被害」で触れ、その具体的な内容については「後障害」の方で触れるということか。

事務局
そういうイメージになると思う。

坪井委員
「4.生きる」と「9.ヒロシマの復興」は、かなり関わりがある。個人的な問題ではなく、社会的にも大きな問題である。我々が体験してきた「生きる」は、今のフクシマとは比べられない。
夏だったので少々蚊に食われるのは仕方ないが、半裸で野宿せざるを得なかった。軽々と生きてきたのではない。そういう点にもっと触れて欲しい。我々は放り出され、誰も助けてくれなかった。それはどこで触れるのか。被爆者としては、ぜひ展示で出して欲しい。でないと情けない。簡単に生きてきた訳ではないことが問題である。
援護法や建設法ができて順調に復興したように見えるが、一般の広島市民もがんばったが、被爆者は二重、三重に耐えながらがんばってきた。外国の方から「ジュノー博士について触れてくれ」ということを、私も聞くことがある。被爆者だけがお礼を言うというより、国が言うべきで問題である。以前は、外国の支援に触れていなかったが、今回触れている点は良いと思う。広島平和文化センターとして支援のことを忘れず感謝している姿勢を示すのは良い。我々は個人的には支援先に感謝することは継続して行ったきた。被爆者は、国に対しても海外に対しても感謝している。
それを踏まえて、「そこから、私はがんばってきた。耐えてきた。」ということも触れたい。そこは言っておかないと。順調にうまく行ったのではない。考えるのは生きるか死ぬかのことだけであった。身体にも悪いものを食べたり飲んだりするなというレベルではなく、生きるために昆虫を食べたり、芋がないので芋の茎を食べたのである。
そうやって生きてきたので、それについては言っておきたい。

石丸委員
「日本への投下」の項目が増えているが、展示する資料が相応にあって、内容をちゃんと見せられるのか。「広島への投下」も別にあるが。
また、今度の展示は「被爆」という言葉は一切出さない方針なのか。エピローグを削除したのは、最後に何も言わない、書くことはないという意味か。それともスペースが一杯だから無理なのか。

事務局
現在の展示にも、なぜ日本に投下したかや、広島への投下についての展示があるが、それと同程度の論理展開は必要と考える。資料の多寡ではなく、項目は必要がある。放射線については「被爆」であるが、原子爆弾(の被害全体)については、爆弾を被るという意味で「被爆」と表記している。放射線被害の箇所では、「被爆」を使用する箇所も出てくる可能性がある。

石丸委員
「6.原子爆弾の脅威」では、「被曝」は必ず出てくるのか。

事務局
エピローグは、「国際化するヒロシマ・ナガサキ」にその趣旨も含めた。

今中委員長
言葉の印象だが、「国際化するヒロシマ・ナガサキ」が良いか、「ヒロシマ・ナガサキの国際化」が良いかである。

大井委員
1ページのテーマサイン、ゾーンサイン、コーナー解説、小項目を具体的に示したのが6ページである。実際に入館してから、各サインのサイズや見せ方も含めテーマサイン、ゾーンサイン、コーナー解説などがどう見えるかである。小学生以上が読めるとか、小さな子からお年寄りまでがこのサインによって流れを全部読み取っていかなければならない。
文字は日本語、英語、中国語、ハングルを入れ、かなり文字量がある。(設置する)場所もどうかである。各サインの大きさや形態は検討していると思うが、いろいろな展示物が入った上での見え方が計算通りにいくかどうかである。

丹青社
テーマ・ゾーンサインとコーナー解説は重要な要素である。文字の視認性や空間の中での存在感を含めて、大きなポイントは検証してきた。書体や文字の大きさなどの細かいところはこれから吟味する段階である。
小項目解説のレベルになると、サイン機能というよりは資料の近くで表示されるので、大きさ、配置はこれからの作業である。展示する資料もこれから決め込む段階である。資料と小項目解説は今後も調整の余地がある。その場合はご相談したい。来館者がわかりやすいように項目を増やした方が良いなど、ご意見が出ると思う。
本日は、テーマサイン、ゾーンサイン、コーナー解説の大きなくくりと、その位置関係について支障がないかどうかを議論頂きたい。小項目については、資料と関連づけて全体の計画が決まった時点で、改めてご確認頂ければと思う。

大井委員
小項目解説は展示物との関係があり、その通りである。大きなくくりで色々なご意見が出ているが、それと資料の関係、「魂の叫び」「生きる」「被爆者」などに関して、展示物・小項目解説、テーマ解説をどうつなげるか。
今回の展示の大きなテーマは、かなりのスピートで見ていく人、じっくりと見ていく人、部分的に見ていく人、色々なタイプに対応できるようにしようとしている訳である。かなりのスピードで見ていく人は空間と展示物の両方を見ながら動いていく。それでもストーリーが読み取れる手法を、今からかなり詰める必要がある。

丹青社
その通りである。基本設計段階でも色々なご意見を頂いたが、本館での資料と解説の見せ方には注意したい。本館の導入部には集合展示があり、これまでにない新しいコンセプトで組み立てている。ここの解説をどのように行っていくかも課題である。資料1点ずつにつける解説と、小項目の解説についても検討し、皆様に議論いただく予定である。

静間委員
小項目の内容は、11月には示されるのか。

丹青社
全体の資料の配置と小項目の位置は示したい。展示配置図を作成して皆様に確認していただく予定である。

水本委員
コーナー解説についての率直な印象であるが、上部の見出しは読む気になるが、本文を読む気になるかというと、あまり読みたくない。美術館でも、展示室の説明があってもそれは読まないで、作品のところにすぐ行きたい、という雰囲気になる。設置する以上、何らかのメッセージが込められていると思うが、「立ち止まってちょっと読もう」という工夫がないと、飛ばしてしまうと思う。色合いがグレーなのもどうか。見出しは読みやすいが、本文は(色彩が)暗くて読みにくい。

丹青社
今回は文字の大きさや、原稿を200字として4カ国語を入れた場合のボリューム感をご確認いただく趣旨である。カラー化するとかえって邪魔になるためモノトーンにしている。実際のデザインはこれから詰める。照明を暗くしてもわかりやすい色彩や文字の大きさを決めていくので、また確認いただければと思う。200字の解説でもこれだけの文字量があり、一見すると文字だらけのコーナー解説と捉えられてしまいかねない。この状況をご覧いただくために(実物大の)サンプルを持参した。

大井委員
補足資料の1、2、3を見ても、とても文字が多い。言葉で、文字で見せることになるので、文字の長さや内容をかなり吟味して簡潔に表さないといけない。仮案として出されているが、こういう路線で良いかどうか。こういう展示をする場合、言葉の選択はとても重要。見せ方もあるが、この言葉で何かを強く感じていただくよう、言葉の内容をどうするかを具体的に、クオリティの高さが求められる。

事務局
丹青社は見え方、視認のしやすさという点から200文字程度で検討している。来年度は先生方にもご協力を頂きながら、執筆を具体的に進めていく段階になる。その段階で200文字に絞れるか、という点がある。このコーナーは250字、別のコーナーは230字など、もっとシビアな点が出てくるだろう。それも含めて、文字の大きさやデザインを逐一調整することになる。そういったことを可能にしておき、「伝えること」とデザインとの折り合いをつける。

丹青社
それを可能にしておく。

今中委員長
4カ国語を使うことの宿命だと思う。読む人の自国語だけあれば良く、逆に他の3カ国語は邪魔である。しかし、外国の人にもしっかり見ていただこうとすると4カ国語表記を選択することになる。なるべくコンパクトにしていかないと、見てもわずらわしいものになる。文字数も検討しているが、この程度ではないかと思う。

水本委員
タッチモニターは、来館者が13カ国語のうちどれかを選んで見るのか。

事務局
現在、多言語翻訳システムがコーナー毎の冒頭にあり、タッチするとコーナーの解説が読める。今の案では、それと同様のものを設置する予定にしているが、このタッチモニターをどうするか内部でも議論がある。パンフレットを充実させればタッチモニターはなくても良いのではないかという話も出ている。また、タッチした人しか見られない。

石丸委員
ベルサイユ宮殿や森美術館では、音声ガイドを無料で全員に配っている。入場料に含まれており、言語が選べる。10カ国語近くあったと思う。番号を押すと聞こえてくる。ベルサイユは部屋が大きく、また混雑しているので、その方法しかないのかと思う。資料館でも、人が多い時は展示に近づけない。後ろで音声だけを聞くような方法もあるのかなと思う。ただし、管理が大変である。

事務局
そういう方式があることは理解している。入館料や管理の問題などが出てくる。

石丸委員
音声ガイドは、コーナー解説の番号に対応しているだけではなく、それぞれの資料の番号にも対応しているのか。

事務局
現在の音声解説は資料の番号に対応している。

石丸委員
コーナー解説の番号よりも多いのか。

事務局
そうである。現在の音声解説は有料である。

坪井委員
入館者数の制限ができるのか。ガードマンがいて「はい、どうぞ」と誘導するのか。それとも一切制限せず、来た人をどんどん入館させるのか。

事務局
制限は行わない。

丹青社
13カ国語のタッチモニターは面積を占める。使われる頻度は、4カ国語に比べればかなりが低いだろう。スペースが限られている中で、モニターを設置することによりコーナー解説パネルが大型化し、展示資料が制限を受ける。必要かどうかを整理していただき、パンフレット、リーフレットで対応するのが一番良いという結論になればコーナー解説からモニターを削除し、その分を展示で有効に使える。設計側としては、その方が良いと考える。事務局と検討中である。使用頻度が少ないからなくても良いとは一概に言えないと思うが、展示スペースの有効活用という側面もある。皆様のご意見があれば参考にお聞きしたい。

大澤委員
現在のタッチモニター全てを英語で見てみた。簡単な英文がちょっとあるだけで、それを置く代わりに手元資料をもらって読めるのであればその方が良い。資料で200字以上の解説が書かれていれば興味を持って読むと思う。モニターは他の人がいない時でないと使えないし、読んでいたら小さな子が来て別のボタンを押してしまい、続きが読めなくなった。少しの解説のために大きな面積を使うのであれば、なくてもいい。紙資料で十分ではないか。

リーパー委員
自分の携帯電話で見るようにできないか。携帯電話のない人は、それに相当するものを500円払って使う。そういう方法は不可能なのか。

丹青社
可能である。携帯電話をバーコードやQRコードにかざすと解説や情報が引き出せるようにすることはできる。すべての来館者が同じように使えるかは、難しい部分もあると思う。携帯電話を持っていない人に(同等の)機器を貸し出すとすると管理面の課題が生じる。機器、技術的には完成されたシステムであるが、運営上の課題があると思う。

今中委員長
13カ国語をどのように線引きするかである。日本語を含めた4カ国語の他、インドネシア語やタイ語などの使用はどの程度あるか。英語は世界の共通語という位置づけになっているが。

事務局
現在の使用頻度を調べている。事務局で詰め、次の機会に報告したい。タッチモニターを削除することはおかしい、というご意見は出ていない。それも踏まえて私共で検討したい。

石丸委員
テーマサインは立体的に斜めにする等、よく見えるようにする方法はあるか。連続していれば存在がわかるが、テーマ、ゾーン、コーナーとあって、どこでテーマが区切られるのかがわからないのではないか。

丹青社
現在の案では、ゾーンサイン、テーマサインは天井から吊り下げる。

石丸委員
斜めにはしないのか。区切りはわかるのか。

丹青社
資料2ページにあるが、コーナーの区切りのところで天井から吊り下げるので、遠くからも視認でき、区切りがわかりやすいと判断している。

石丸委員
本館はゾーンサインも吊り下げるのか。テーマサインが一体化しているのではないか。

石丸委員
13カ国語とはどういうものか。

事務局
現在、資料館で行っている13カ国語の展開は、(例えば)「原子爆弾の開発と投下」の展示説明と同じ内容を、タッチモニターで該当言語を選択し見るものである。

リーパー委員
そういったモニターは限界があると思う。インターネットや内部イントラネットなら、いくらでも多カ国語を付け加えることができる。多数の人をご案内した立場から言うと、その人にとって自国語があることはすごい喜びになる。中国や韓国の人はある程度の(量の)自国語があるのは当たり前だと思っているが、インドネシアやタイの人は自国語があると非常に喜ぶ。インターネットのようなかたちで、誰でも自国語で解説が読めるようにできれば価値がある。

事務局
コーナーサインのように展示の中に入れるのではなく、個別に対応できるデバイスを使うということか。展示の中に共通して設置する必要はない、という意味だと理解して良いか。

リーパー委員
そうである。

事務局
インドネシアの方々が自国語があって非常に喜んでいたので、(その点は)実感としてある。

石丸委員
今のパネルと対比できるようになっていれば良い。「復興」のところなどは文字が多すぎると言われるかもしれないが。

丹青社
この件は事務局と協議しながら、ハードの活用方法の提案も含め、次回報告をさせていただきたい。

坪井委員
相当なものができそうだが、瞑想にふけったり、展示がどういう意味かを時間をかけて見る人もいる。大体で、最低どの程度の見学時間が考えられるか。皆さんはどのくらいの時間で館を回るか。値打ちがある館と言えるくらいの時間をかけたい。我々の立場では何時間もかけて欲しいが、30分で見たいと言われると残念。しかし、おおよその時間がわかっていないと、所要時間を教えられない。

今中委員長
これまでの平均時間が40数分という統計はあるが、リニューアル後は本館から入っていく。見学時間も変わってくるのではないか。

事務局
じっくり見て欲しいという気持ちを持っている。1時間でも2時間でもしっかり見る価値はあると思う。それ以上の時間をかける人もいる。現実は、学校やツアーなどの団体の滞在は平均して1時間程度がリミットである。現在の展示を45分間とか1時間とか限られた時間内で見て回る場合、文字の多い東館をじっくり見て、きちんと見て欲しい原爆被害の実相についてはあまり時間をかけて見ていないことから、資料館の基本計画では、最初に原爆被害の実相を展開することとした。そこで見終わることも可能な展示である。原爆被害の実相は最短でも30分以上見て欲しい。時間のある人はさらに東館の文字情報や復興の経緯も見て欲しい。あとは実際に見る方々の気持ちとして、ここで何を調べたいかによる。

石丸委員
ホワイトパノラマ模型やパネルなど色々な展示ができていく過程で、仮設の資料館を作れないか。広島大学の理学部などの場所がある。現物資料は資料館にも保存されているだろうが、資料館と同じ広さで仮設展示を行い、開館時に一気に移設するなど。そういった仮設展示場の構想はないのか。

事務局
部分閉館することになるので仮設展示については検討しているが、資料館と別の場所での展開は考えていない。現場環境でホワイトパノラマ模型やパネルを見え方を検討する時に、資料館の実際の空間に即したかたちで行うことが必要だと考えている。資料館の閉館後に、同じ環境で資料を展示してみる等、同じ環境下での見え方の検証をしたい。

石丸委員
仮設展示でも同じような環境で作ることは、これまで多数の事例がある。複数階を作るのは難しいので平面にしないといけないが。

大井委員
資料1ページの表で、東館3階~2階はテーマとゾーンが一緒になっているが、これはどう考えたら良いのか。テーマなのか、ゾーンなのか。

丹青社
テーマサインとゾーンサインを兼ねたものを考えている。本館は全体が「被爆の実相」である。東館も同じ見え方になるようにしている。

大井委員
今回の計画では、本館と東館の役割をはっきり分けようとしている。つながっているようでつながっていないというか、それぞれの役割をはっきり見せないといけない。連続性と、本館・東館のそれぞれの見え方を順次追っていく中で、違和感のないように、テーマサインなのかゾーンサインなのかも内部で整理しておかないといけない。

丹青社
本館と東館の見え方の違いは、基本計画段階から本館は「被爆の実相」の展示であることを一番大きなくくりとして設定していることに起因する。そのため「ここから、本館の「被爆の実相」の展示が始まる」という表示を、渡り廊下を渡った正面のところに設置している。その後のくくりについては、本館のゾーンサインは東館のテーマサインと同じ見え方となるよう設定している。来館者にとって「ここからがゾーンやテーマの切り替わりだ」ということを示すサインは同じ見え方として意識してもらえるように考えて整理している。

大井委員
コーナー解説は統一しているのか。

丹青社
そうである。本館と東館の天井高にかなりの差があるので、パネルの高さは異なる。文字の見え方、位置関係は共通としている。

大井委員
小項目の解説は実物をどう展示するかと関係するということであったが、東館の小項目の解説に対応するのは、実物資料よりも映像モニターや写真になる。小項目で挙げられているものと、どういうソフトをどのように見せるかの関係が出てくるのでおろそかにはできない。ここは宿題がまだたくさんある。

丹青社
東館3階「核兵器の危険性」の3つのコーナー解説がある。曲面の壁で3つの大きなブロックを設定し、その中に小項目レベルのグラフィックと資料展示がある。壁面の情報では対応できない部分は情報検索で補おうとしている。その情報のすみ分けは、これからの整理である。言われる通り、ここの整理、すみ分けがはっきりしないと、内容が決まっていかな
い。

大井委員
先程のテーマサインなのかゾーンサインなのか、コーナー解説との関係など、東館は宿題が多くあり、そのあたりの調整ができていない。どういう見せ方をするのか、現実的に展示するものとソフトを含めて組み立てながら、小項目、テーマ解説、ゾーンサイン、テーマサインの関係性がどうなのかをフィードバックさせていくことが必要である。

丹青社
その通りである。11月の次回検討会議で皆様に検討いただくポイントの1つが情報検索テーブルの表現である。

大井委員
それはイメージが一番湧きにくいところである。

丹青社
情報量の限界はどうか、グラフィックでどこまで表現するか。情報検索には多くの情報量を入れられるが、操作しないと情報が見られない。その兼ね合いは事務局と協議して整理した上でデモを行いたい。本館も東館も、小項目レベルでは実物と情報の詰めが必要となる。

大井委員
東館の現在の資料について色々なご意見もあると思うが、あまり小綺麗で薄っぺらなものにならないように、かなり注意して表現をして欲しい。

静間委員
補足資料を見ると本館と東館が同じような色使いだが、東館は「被爆の実相」とは違うので、トーンを変えた方が良い。

丹青社
色の検討はこれからである。現段階で極端に色を変えると違う見え方になってしまうので、敢えて同じトーンで表現している。色についても十分に検討する。

水本委員
東館の3階~2階はゾーンサインを敢えて分けていないが、「5.原子爆弾の開発と投下」「6.原子爆弾の脅威」は広島と長崎の原爆で、「7.核の時代から核廃絶へ向けて」はそれ以降の時代の話である。東館2階は「8.戦時下の広島と戦争」は被爆前、「9.ヒロシマの復興 さまざまな支援」「10.平和な世界をつくる」は被爆後である。そのように分けることもできる。空間が一つなので、分けることによって来館者の意識が変わるのであればゾーンを設定することもあるのではないか。直線上で5、6、7とか、8、9、10と並ぶと、命題がなく過ぎて行ってしまうのではないか。

丹青社
展示構成上はゾーンで区切ることもできるというご意見である。東館は3階も2階もスペースが狭く、天井高も低い。本館との共通性をもたせるために天井からの吊り下げサインを設置してすると、煩雑で区切りがわかりにくくなる。コーナー解説を工夫して、一つのくくりであることがわかるようにする方が現実的である。

水本委員
ゾーンを分けなくても何らかのかたちでメリハリがつき、それが来館者にとって意識づけができるのであれば良い。

水本委員
本館の「観覧後の心情に配慮した場」は平和公園の解説が予定されている。基本的にはそれで良いと思うが、広い空間になるので効果的な手法があれば考えても良いのではないか。

大井委員
同様である。この場所をどう使うか。東館1階の企画展示やミュージアムショップ、屋外に向かって喫茶店や売店の扱いをどうするか。
企画展「基町」は興味深い内容であったが、よほど「行こう」と思わないと、あの部屋までたどり着かない。地下の使い方をどうするか、というご意見も色々あるだろう。平和記念資料館をどれだけの時間をかけて回るかという話があった。
資料館での時間の過ごし方は、半日くらい時間をかけようと思えば十分に滞在することができるし、時間の制限がある人は30~40分でも効果的に見ることができる。過ごす時間が長い人たちをどのように捉えて増やすか、という視点もある。そのようなしくみをもっと積極的に入れていった方が良いのではないか。
建物はもう既に存在するので、地下をどう変えようと言ってもそれほど簡単にはいかないが、努力する必要はあると思う。

宇吹委員
毎日見ている訳ではないが、来館者の入り具合を見ると東館3階~2階はずいぶん人が少ないように感じる。調査されたことはあるか。長崎は、本館から戦後の核問題の解説になると極端に人が減る。もっと工夫がいるのではないか。現状はすーっと通り抜けてしまい、奥の方に人がちらほらいるような印象である。

事務局
東館は誰もが通るルートであり、特に人が少ないとか、解説を読んでいないということはないと思う。むしろ本館をもっと見て欲しいのに、東館で時間を使ってしまう人が多い。東館1階は特に滞留する。

宇吹委員
1階は滞留している。東館の2階、3階は人が少ないのではないか。

事務局
リニューアル後は本館をしっかり見てもらう。時間のある人は東館をゆっくり見るし、通り過ぎる人も主要な展示項目については目に止めながら移動できるようにする、という考え方である。丹青社はそれを踏まえて作業を進めている。滞留の面については、今以上に人が流れる可能性が高い。

大井委員
資料3ページだが、「広島平和記念資料館のご案内」「広島平和記念資料館の設置」が置かれる玄関周りの課題がある。1階は無料ゾーンになる。平和記念公園を散歩する地域の人々に気軽に入ってもらい、色々と興味を持って積極的に見ていただくようなしくみを作る必要がある。この部分は展示とは別で、建築設計側で積極的な案を検討してもらいたい。
同様に、平和公園側に面した本館のギャラリースペースの見せ方も、展示とは別である。建築や公園を一体的なものとして考えるレベルであるから、展示検討会議で考えるというよりは全体計画を視野に入れてどうするかを検討した方が良い。

今中委員長
本日はテーマサイン、ゾーンサインについての検討であったが、次回の検討内容に踏み込んだ意見もあった。テーマサイン、ゾーンサインについては意見や希望が出された。多様な意見があり、ここで一本化してまとめることはできないと思う。本日の意見について事務局と丹青社でまとめ、修正が必要な箇所について詰めるものとする。
次回は、展示の具体的な内容についてである。音声ガイドの使用についても検討する。

リーパー委員
検索テーブルもコーナー解説5?6も、かなり情報が多いように見える。情報は、いくらでもどこからでも入手できる。ここにしかないものは実物資料である。収蔵庫には衣服や、心を打つような色々な実物が多数ある。それをメインにして、それぞれにあるストーリーを伝えたい。メインの焦点をそれに与えて、情報は自分の携帯端末でどこからでも入手できるなど。バーチャル資料館を見れば、情報は全部入っている。
この空間の中に入って圧倒されたい訳である。館を出た時に「あれだけとんでもない出来事があった」という感情をもつ部分が大事である。たくさんの情報があって小さな文字を読まなければいけないとか、人と競争するように検索しなくてはいけないとかでは、「圧倒された」という気にならないのではないか。それが心配である。

今中委員長
それは東館についてか。

リーパー委員
東館の3階、2階についてである。

今中委員長
基本的な方針に戻ると、東館に遺品などのインパクトがあるものを展示するのは考えにくいと思うが、いかがか。

大井委員
この計画の流れから見ると、少し違和感がある。リニューアルにより、企画展示スペースは東館1階となる。最近、美術作家が、残された衣服などの遺品を紹介する展覧会を開催した。そのような、従来の資料展示とは違った角度から、色々な資料を掘り起こしていくことを含めて、興味を持たれるような企画展を積極的に実施したらと思う。そういう場にすれば良い。企画展のスペースはまだまだ少ないのではないか。地下とも連動した使い方をすれば、スペースも広くなる。これから先の話になるが、先程言われたように色々な資料を収蔵庫に眠らせておくのではなく、積極的に表に出してインパクトのある見せ方で使っていくことを十分に考えていく必要がある。

今中委員長
リーパー委員の指摘には、検索機能はテーブルでなくても館内のどこでも情報端末で見られるようできるので、その代わりに被爆資料を展開してはどうか、という点もある。

大井委員
全体ストーリーを作り上げてきた中で、コンセプトからは外れるのではないか。

リーパー委員
地下1階に原爆の絵のギャラリーがあり、見た人はとても感動するが、ほとんどの人は見に行かない。特別な感動を与える場所が必要ではないか。ただ情報があるだけではもったいない。我々は、心を打つ実物資料をたくさん持っており、それが眠っている。誰でもどこでも読める情報を設置するよりも、資料を眠らせておくのではなく、使った方が良い。

大井委員
今の東館2階~3階のコンセプトでは、できるだけ情報を整理し、短時間で見る情報と、少し踏み込んだ情報、より深く踏み込んだ情報を展開することで、つながったストーリーができている。被爆資料を展示する場合、何らかのつながりを持ってストーリーと絡めて紹介することはできるかもしれない。2階~3階を使って大量の実物資料を展示するのは、今回のストーリーから見て無理がある。
先程触れたように、東館1階の企画展で実物資料をしっかり見せるようにした方が効果的だろう。ただ、スペース的に十分とは言えないので、そこは課題として、地下1階の利用も含めて考えてはどうか。

リーパー委員
そうであるが、情報はどこからでも得られる時代である。得られないのは、我々しか持っていない実物資料や写真、映像などで、一番大事な宝物である。情報はそれ程大切ではないと思う。

坪井委員
リーパー委員の思いを十分発揮できるように、我々も考えてきた。一番大きな点は、ダイレクトに3階に来館者を上げることである。今までは、疲れ果ててから本館を見なくてはいけなかった。感激しようにも、「ああ、疲れた」という気持ちで実物資料を見る。それと、実物資料がすぐに見られるのとでは、全然印象が違う。リーパー委員の思いは、今後の運営面においても大事である。

大井委員
情報は、インターネットを使えば世界中から見ることができる。東館2階~3階で展示しているものと同じ情報が入手できるのではないかということである。実物資料を見て、そこから先の情報を展示するのであるから、単にインターネットの情報を見るのとは、情報の見え方は当然異なるだろう。そこのつながりは、本館の実物と、東館の情報をうまくつなげなくてはいけないし、両者の違いを来館者にはっきりと感じさせなくてはならない。難しい手法が必要だと思う。
私も、収蔵庫に眠っている資料をそのままにしておくのはもったいないと思う。資料館や、平和公園全体を使って、積極的にやるべきだと思う。

今中委員長
リーパー委員の思いは十分に伝わってくる。企画展示で扱っても見ない人がいるので東館で扱ってはどうかという点である。しかし、今までの議論は何だったのかというほど東館の位置づけがガラっと変わってしまう。実物中心となると、展示ケースをどうするか等の課題も出てくる。現時点での変更は難しいのではないか。

リーパー委員
了解した。

今中委員長
多様な意見が出され、ここでの集約が難しい。事務局と丹青社で詰め、反映できる点は活かしていただきたい。活発なご意見を頂いたが、その他にもご指摘があれば頂きたい。

【事務局】
今後のスケジュールを説明

《閉会》