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第9回 広島平和記念資料館展示検討会議要旨

1 日時
平成23年(2011年)12月21日(水)14:00~16:00

2 場所
広島平和記念資料館東館地下1階 会議室(2)

3 出席委員(8名)
大井副委員長、水本副委員長、石丸委員、宇吹委員、大澤委員、静間委員、坪井委員、賴委員

4 事務局(9名)
平和記念資料館 前田館長、増田副館長、山根副館長、大瀬戸主任、落葉学芸員、福島学芸員
市平和推進課   石田被爆体験継承担当課長、井手口主任技師
広島平和文化センター総務課 三好課長

5 丹青社(5名)

6 議題等
報告  「上りエスカレーター」について
議題 1 「被爆の実相(本館)」について
議題 2 「導入展示(東館1F、3F)」について
議題 3 「核兵器の危険性(東館3F) 広島の歩み(東館2F)」について
その他 「東館1Fフロアプラン」、「展示解説サイン計画」について

7 公開、非公開の別
公開

8 傍聴者
報道機関6社ほか1名

9 会議資料名
第9回広島平和記念資料館展示検討会議次第
「上りエスカレーター」について 報告資料
「広島平和記念資料館展示基本設計業務」検討資料

※会議資料は、広島平和記念資料館学芸担当(広島市中区中島町1番2号:広島平和記念資料館東館3階)でご覧いただけます。

10 会議の要旨

《開会》
【報告 「上りエスカレーター」について】

【事務局】
「上りエスカレーター」について、第8回検討会議でA案~D案の4つの整備案の比較検討がされたが、結論が出なかった。その後、エスカレーターの輸送能力や観覧者の動線等を考慮するとA案が適するとの事務局案を委員に提示し、全委員(11名)の了承を得たうえで、同案に決定したことを報告。

大井副委員長
上りエスカレーターについてはA案で整備することとなった。委員から要望があった点に配慮して整備を行うものとする。 


【議題1 「被爆の実相(本館)」について】

【丹青社】
「被爆の実相(本館)」について、第8回検討会議で比較検討された内容をより精査した案を説明。

大井副委員長
丹青社の説明に対して、御質問・御意見等あればお願いしたい。

石丸委員
湿度管理しないとどういう問題が起きるのか。すでに資料の劣化が進んでいる。湿度管理をすればそれを食い止められるということか。どの程度、管理するか。時代も動いている訳であるから、オープンな展示として、そのような環境の中で資料も歴史を刻んでいくという考え方もある。少しでも長く保存し、劣化を遅らせるのか。

大井副委員長
事務局としてはいかがか。

事務局
資料館としてはなるべく長く保存していきたい。劣化をなるべく抑えたい。

石丸委員
保存を目的とすると、完全密閉式で湿度管理することになる。それで失われる展示の側面もあると思う。保存管理を徹底した方が良いのか、人類の歴史と共に劣化が少しずつ進んで良いのかということもあるかと思う。原爆ドームはまさにそうであると思う。そのあたりの基本的な考え方は、皆さんご意見があるのではないか。

事務局
被爆して高熱を浴びている資料は通常の布類に比べて劣化が早い。それを考えると、せめて通常の布類と同様の保存方法か、できればもっと長期的に保存したい。

石丸委員
特に劣化の激しいものについては、当然ながらそうだと思う。 事務局  現在、露出展示をしている資料についてのご指摘だと思う。布、衣類以外についても、何らかの劣化が進むという見解である。保存の観点からは、先程申し述べた立場を取っている。見せるという観点から、別のご意見は勿論あると思う。そこは調和させながら進めたいと思う。

石丸委員
資料によって劣化の進み方が違うので、可能な限り湿度管理した方が良いものと、あまりこだわらなくて良いものがあるとすれば、資料ごとに考えてはどうか。

丹青社
煉瓦塀などの大型資料は現在、露出展示されている。湿度の影響はあまりないが、塵・埃が多い。定期的に清掃しているが表面部分は劣化している。湿度以外に、塵・埃など外気に直に接することによる影響があると懸念している。

大井副委員長
保存性から見ると、A案であれば適切な環境が保てるのか。

丹青社
全体として適切な保存環境の中に資料を置くことができる。

大井副委員長
ひとまとまりの空間の中で、それぞれの資料を良好に保ちながら見られるということか。

丹青社
そうである。

静間委員
石丸委員が言われるように、衣類はケースに入れる必要があるが、大型資料はなるべくオープン展示にする。埃については、床の材質を検討したり、払って除くことができる。全体をA案のように収めてしまうのは、私としてはあまり良くないと思う。表の5項目めの「同時に一瞬にして破壊された惨状を伝えることができる」という箇所は、当時と同じ場所に現場を再現した訳ではなく、様々な場所で被爆した資料を集めて展示することになるため、○や△で評価できないのではないか。都市と人が同時に破壊されたことをA案が表すとは思わない。オープン展示のあるB案、C案でも良いのではないか。

坪井委員
できるだけ当時の様子を、という意味では分けない方が良い。A案でいきたい。ただし、被爆者が見ると、きれいすぎると言う人もいる。「あんなものではない」と。しかし、あの惨状をそのまま表現することはできない。だから、今日的な訴え方があると思う。配置のほかに光や音響も検討した方が良い。
「きれい過ぎて資料館の値打ちがない」という声もある。それを否定する事はできないが、A案で進めたい。B案のように分けるのは抵抗がある。

石丸委員
A案の方がきれい過ぎるような気がする。C案では、ケースに入れるのは温度・湿度管理が必要だから、というメッセージがある。オープンにできるものはオープン展示している。ケース展示によってメリハリが出ないと通り抜けて行ってしまう。見え方に変化があれば注目して見ることもある。

坪井委員
光や音を使ってメリハリを出していく。B案のように分けるのは違うと思う。当時、惨状が分かれて起こった訳ではない。A案なら展示替えもできる。

大井副委員長
これまでのご意見について何かあるか。

水本委員
ガラスがあるのは抵抗があるが、小さいケースが多数あると一体感が阻害される。レイアウトが自由に替えられるのは大事。観覧者の気持ちになると、心理的にガラスで隔てられている意識が強いと抵抗感が生じる。いったんガラスの向こう側に意識が入ってしまえば、美術館で見ているように抵抗を感じなくてすむのではないか。ガラスを感じさせない工夫、ガラスにくっついてよく見え、心理的に中に入り込んで見られるようにできれば。一体感という意味では、A案でやむを得ないのではないか。

静間委員
A案だとケースの向こう側の世界で、観覧者とは関係ない「きれいな世界」になってしまうのではないか。

大井副委員長
これまでの経緯として、集合展示という手法が展示のテーマになっている。「都市の壊滅」と「人の被害」が同時に、かなり大きな規模で起こったことを集合展示によって見せていく。できるだけその部分はコンセプトを通していかないとまずいだろう。そこが手法に関わってくる。ガラス越しだから向こうの世界、という部分も確かにあるが、手法、配置、見せ方を工夫により、ガラスの中の世界に入ってもらいたい。技術的な話にもなる。「集合展示」というコンセプトをしっかりと表現してはどうか。
集合展示と、図の下側の展示の関係性が離れているのではないか。ここを一体的な空間として見せることも検討が必要である。各委員からの意見は、一体感、スケール感に関わる部分も多い。それを考慮した展示の手法、見せ方を考慮していく。A・B・C案の選択はいかがか。

静間委員
個別展示は全てケースに入れるのか。

丹青社
そうである。湿度管理の件については、鉄骨、鉄扉などの金属は湿度の影響を受けている。これまでのオープン展示によりどの程度劣化が進んでいるかである。未来にわたって資料を残していけるようエアタイトケースを検討している。

大井副委員長
A~Cの3案の中では決定しにくいということか。

石丸委員
劣化をどう考えるかである。長期間保存するためには、資料保全をきちんと行う必要がある。

大井副委員長
大型資料を含めてより良い保存状態を保つ、ということである。

石丸委員
鉄骨が屋外に設置されていれば劣化するが、屋内ではそれほど劣化しないのでは。そこまで気にするのかという事になる。

静間委員
被爆した鉄材はもっとボロボロで、展示されている資料はきれいな方だと思う。それをきれいに保存するのはどうなのか。

事務局
事務局としては、見る人にいかに被爆の実相がきちんと伝わるかが大前提であり、集合展示によって一瞬にしてさまざまな破壊や被害が起こったことを一堂に表現したのがA案である。そうではなく、間近に資料を見ることによって被爆の実相を感じ取らせるのか。一堂なのか、間近なのかだと思う。資料は大事だが、保存だけが最優先という訳ではない。

大井副委員長
A~C案で、重要な資料はそれぞれガラスケースに収めている。大差はないという見方もある。間近に見せれば当然触られることもある。

石丸委員
資料館全体のコンセプトづくりに関わる。

大井副委員長
前回の検討会議までに詰めてきたことであるが、「都市の壊滅」と「人の被害」を総合的に展示するのにもっとも有効な手法とする。ABC案のどれかということではなく、出されたご意見も含めて実施設計に近い案を詰めていき、再度お諮りすることではどうか。ケースに入れるか出すかの並べ方だけで委員の意見を全てクリアできる訳ではない。特に、「都市の壊滅」と「人の被害」の集合展示に留意してほしい。折衷案なのか、A案がベストなのか、調整が必要である。

丹青社
集合展示と個別展示の見え方もあるので、精査を進める。A~C案の展示方法によって、それぞれの資料に付ける解説、写真など、付随する情報の見せ方も変わってくる。それを考えながら、もう一歩進んだかたちで提示することになる。詳細は実施設計で行うが、その方針を検討する。

大井副委員長
「都市の壊滅」と「人の被害」の一体感を出す集合展示は、本館の観覧者が初めに出会う「感じる空間」として重要である。より実施設計に近いレベルで詰めて欲しい。


【議題2 「導入展示(東館1F、3F)」について】

【丹青社】
導入展示について、第8回検討会議で比較検討された内容をより精査した案を説明。

大井副委員長
A~C案が提示されたが、ご質問、ご意見があればお願いしたい。

石丸委員
改装後の入場券の発券やチェックはどの場所で行うのか。

事務局
P.24になる。現在よりもセットバックして受付カウンターを設置し、そこで発券することになろうかと思う。エスカレーターで上る前にチェックを行う。

石丸委員
チェック場所はエスカレーター前の設置目的のところか。団体ならまとめてチェックを受けるだろうが、個人をチェックしきれるかどうか。あまり厳密にチェックしないのか。

事務局
チェック場所は、エスカレーター前の近辺になるだろう。そこしか場所がない。現在も、それほど厳密なチェックという訳ではない。

石丸委員
発券の場所をきちんと検討しておいた方が良い。有料制を維持するのであれば、チェックの場所を明記しておく必要がある。

大井副委員長
東館1Fには企画展もあり、チケットをチェックする機能は必要である。

石丸委員
エスカレーターを上ったところの空間に、団体客が滞留する恐れはないか。ここで団体が足止めされると、個人客がUターンの所の展示を見ないで素通りするのではないか。Uターンの所に重要な展示があると、それを見ないで行ってしまう人がいるのではないか。

丹青社
エスカレーターの搬送能力を考慮すると、観覧者をエスカレーターで上げる前に上フロアの混雑状況を把握する必要がある。エスカレーターを上ってから「混雑している」では、逃げがきかない。団体を誘導する前に、フロアの滞留状況をチェックしてから入館させる必要がある。いったん上がってしまうと、混雑を回避するための余裕スペースが確保できない。

大井副委員長
上ってからすぐにUターンさせなくてはいけない。上ってからUターンするよう、観覧者を誘導する空間の仕組み、仕掛けが必要である。

丹青社
誘導のサインは必要。エスカレーターで上っている時点で、動線がどうなっているか伝える必要がある。上ったところで迷っていると危険でもある。

大井副委員長
入場券を発券する場所、設置目的を表現する場所などの空間の整理が必要である。建築との調整もあるだろう。エスカレーターを上がったところの空間をどう展開するかを検証する。

水本委員
固定的な構造物で仕切るのではなく、移動式のロープなどで誘導することもあろう。

丹青社
配慮する。

大井副委員長
エスカレーター設置がA案に決まったので、実施設計に向けて問題点を消化できるよう検討してほしい。

丹青社
了解した。

宇吹委員
C案の「8月6日の壁」は良い案だと思う。時間的な観点を示していると思う。もう一つは場所の観点がある。地域性は、広島の地理を知らない人には理解しにくい。地名で混乱してしまうところがある。体験記や原爆の絵も、地図があるかどうかで理解度が違う。広島市全体の地形が理解できるようにすると良い。
時間では、いつからいつまでを対象とするかを検討する必要がある。また場所で言えば、人がどんどん集まってくる状況を説明してはどうか。人を出さないということだが、それは良いと思う。個々の人間を登場させるのではなく、集合体としてどれだけ集まってきたかを示す。放影研が、原爆投下5年後の被爆生存者が、投下当時にどういう位置にいたかを表した棒グラフを論文で発表した。図録で採用した。そういう状態になる過程が漠然と感じられる。
時間の面では、個々の人間像を出さないにしても、救護所などに被爆直後どのように人が市内に集まっていったかという、人の集合と拡散の状況をわかる限りにおいて提示できれば、地図を見ながらいろいろと想像できるのではないか。

静間委員
C案は、間仕切りを入ってからすぐにホワイトパノラマ模型に人が集中しやすいのではないか。B案は壁面展示を見てからパノラマ模型に流れるので人が分散する。

大井副委員長
C案は、ホワイトパノラマ模型周囲の写真パネルには人物を入れず、建物など都市的規模での写真を設置する案である。同心円の床パターンは実際の距離ではない。ホワイトパノラマ模型を主役にし、それを演出するための写真パネルになる。

丹青社
同心円は距離を表しているのではなく、誤解を受けないようにしたい。爆心地周辺で起こったことを伝える、という意味である。

大井副委員長
C案の写真パネルは、A案、B案とは扱いが違う。

丹青社
そうである。

静間委員
ホワイトパノラマのところにまず人が集まり、そこから周囲の写真を見て回る動線だと、複雑になるのではないか。

丹青社
C案の壁面写真では、パノラマ的に廃虚の広島を感じ取ってもらう。 ホワイトパノラマ模型の周辺の写真パネルはもう少し近い距離で、中景、近景で街の様子を紹介する。細かい説明は入れない。導入展示の役割として、どこに投下されたかという場所・空間的把握、いつ投下されたかという時間的理解、街がどのような姿になったかを予感させるレベルに止めた方が良いと考える。詳細は本館に入ってから情報提供する、という考え方でC案を作成している。時間的経緯の情報は、ホワイトパノラマ模型で伝えることになる。

静間委員
先にパノラマ模型を見てから写真を1枚ずつ見ていくと、滞留時間が長くなるし、人の流れも交錯する。

水本委員
図に動線が示してあるが、このように誘導したいという意図か。

丹青社
そうである。パノラマ模型に人が集中しないように、写真パネルとパノラマ模型の位置の調整が必要かもしれない。

静間委員
ホワイトパノラマ模型に連続的に映像が映っていると、写真よりも先に模型に集まってしまうと思う。

大井副委員長
C案ではホワイトパノラマ模型が主役になる。

石丸委員
C案のようにすると、いくつか犠牲になる。エスカレーターを上った壁面のところはあまりゆとりが無い。Uターンの所に展示をしても、あまり見ないで通り抜けていく人もいる。通路から展示を始めて良いのか。Uターンの所からすぐ展示を見る気になるかどうか。もし遠目から引きで展示を見ようとすると、その目の前を人が通り抜けていく状況になる。

大井副委員長
前回は、壁面の使い方で映像・写真の手法が議論になった。石丸委員が言われた部分は、A~C案に共通してエスカレーターを上がったところでUターンするところにグラフィックがあるが、このくらいの展示量では足りないのではないかというご意見である。もしそれであれば映像+グラフィックのミックス案もある。映像とグラフィックをどうするかでB案、C案が提示されているが、Uターン部分を含めてもう少し整理が必要かと思う。

石丸委員
Uターン部分を何も使わないのはもったいない。しかし、ゆっくり見るよりも、通り過ぎながら感じさせるものか。戦前の暮らしをどこまで詳細に伝えるか、何となく生活が感じられる程度にするか。

宇吹委員
広島の被害の実態を示す模型は、現在どの程度の時間で説明しているか。

事務局
東館・本館の両方にパノラマ模型があり、どちらも5分程度で説明している。

宇吹委員
今回の導入展示の滞留時間は5分と設定されており、あまり詳しく見ないで、移動しながら感じてもらう展示になる。人を登場させずに雰囲気を醸し出すものであって良いし、人を出すのであれば戦前のイメージを重視することで良いのではないか。

大井副委員長
戦前の紹介は、エスカレーターを上がったところのグラフィック部分になる。この絵では写真が何枚か展示してあるだけに見える。大型写真など、壁面を利用して通り過ぎながら戦前の生活を感じられるような表現を検討したい。実施設計の中で表現を上手くやっていく必要がある。

丹青社
エスカレーターを上りきって、初めて展示を見る観覧者は、最初はていねいにゆっくりと見ようとする。現在の観覧状況もそうである。そのため、展示の冒頭はなるべく情報を少なくするのが良い。テーマを立てて戦前の広島の写真を厳選し、1点1点から感じ取れるような構成としたい。目線の高さで視野に入る写真を10点程度見せる。写真の具体的な選定はまだである。展示の冒頭では、観覧者はじっくり見たいという意識があるため、それを考慮した設計が必要。

大井副委員長
3案いずれもエスカレーターを上がった部分は同様なので、そこをクリアして欲しい。A~C案のいずれが良いだろうか。

水本委員
現在の東館にも映像がある。ホワイトパノラマ模型で映像を上映するのであれば、そこに集約されるのではないか。来館者へのメッセージを、導入展示の後で示すのも一つの考え方である。展示に対する国際的な意見では、なぜ戦争の問題を取り上げないのかという疑問は必ず出される。それに応える必要がある。核兵器の危険性についてフォーカスするのだというメッセージを伝えるタイミングとして、導入展示を見た後で伝えるのは良い。C案の最後にメッセージがあっても良い。エスカレーターを上る前に設置目的があって、導入展示というワンクッションを置いた方が良いのではないか。

大井副委員長
ホワイトパノラマ模型を中心としたC案で良いというご意見である。映像とグラフィックのどちらを使うにしても、壁面でいろいろな情報が入れ替わっていくと、忙しい空間になる恐れがある。ホワイトパノラマ模型に集約させ、周囲の壁はそれを助ける展開か。メッセージは一番最後の壁面で展開してはどうか。

石丸委員
それは良いのではないか。メッセージの後、本館に入る。

大井副委員長
渡り廊下で緊張感が途切れるという説明があったが、本館に向かう緊張感をいかに持続させるか。逆方向から戻ってくる人ともすれ違う。人が交差する場所でどう上手く展開するか課題になる。

丹青社
通路幅に限界がある。情報を出せば観覧者の足を止めることになる。感じ取らせる空間になる。現在、窓があって外が見えるが、それをふさぐことも考えている。

大井副委員長
渡り廊下の課題は、建築条件にも影響される。

坪井委員
エスカレーターを上ったところはC案が良い。長時間見る必要はない。初めて展示を見る人にとって、字のメッセージは要らない。C案は混雑しそうな気がする。上がった部分の配置はB案、内容はC案を当てはめてはどうか。一目だけぱっと見てもわかるよう。

大井副委員長
読ませたり、立ち止まらせる空間ではなく、これから起こることを予感させる空間にすることである。壁面をなるべくシンプルにし、海外からの観覧者やプレス関係者にも対応するようなフレキシブルな場が求められる。C案をベースに詰めていくことで良いか。


【議題3 「核兵器の危険性(東館3F)、広島の歩み(東館2F)」について】

【丹青社】
「核兵器の危険性(東館3F)、広島の歩み(東館2F)」の空間課題、展示のあり方、イメージについて説明。

石丸委員
展示システムのいろいろな説明があって、消化不良のところがある。A~C案のバリエーションではなく、考え方の幹があるかどうかである。それで自然に決まってくるのではないか。どれか選べと言われてもよくわからない所がある。アテンションを採用している事例や、大型のアテンションを設置している館はあるのか。

丹青社
企画展は別として、常設的に設置している館はないだろう。

石丸委員
P.13では大型のアテンションだが、押しつけになるのではないか。英語やハングルの表記も必要になってくると複雑になるのではないか。

丹青社
アテンション提案の経緯であるが、前半が本館展示、後半は東館展示となる。本館展示がメインであり、そこで疲れてしまって東館を見ずに帰る人も多いと考える。東館では詳細な展示を集積しようという中で、何も見ないで素通りする人もいるとすれば、何らか印象に残るように伝えたいメッセージを伝える仕掛けを持っておきたい。この館独特の、訪れる人の多さ、人の流れを考慮すると、アテンションは機能するであろう。だから他館の事例はないと思う。書いてある言葉の表現がうんぬんではなく、展示内容の要約、データ的なもの、メッセージなどを抜き出して紹介する機能がアテンションである。

大井副委員長
アテンションに資料館の姿勢が出るので、慎重な扱いが求められる。パネル展示だけではなく、年齢別や、研究的に見る人にも対応するという提案である。アテンションは、小中学生や比較的短時間で展示を見る人にも資料館の意志や広島のことを理解してもらう意図である。コンセプトとしては面白いが、具体的にそれを表現してスペースに落とし込むとどうなのか、という話である。
東館はデータ的な展示が主になるので、往々にして単調な文字パネルや映像となり、他の展示館とあまり差別化がなくなる恐れがある。コンセプト的に効果が出そうなところはあり、もうちょっと内容を詰められるか。
展示内容に入る前の、ここの展示コーナーのあり方の整理である。

丹青社
東館は、客観的なデータや史実を伝える詳細展示だと位置づけられている。詳細情報が一堂に並んでも、どこを見て良いかがわかりにくい。東館は現況の展示面積から減ることもあり、ある程度大づかみに内容を把握してもらい、そこから詳細情報を見てもらうような展示構造を検討している。
アテンションは、メッセージを出すのか、データや客観的な史実を一目でわからせるように出していくか、あるいは通り過ぎながらでも展示内容を短時間で伝えるか、いくつかの考え方がある。アテンションだけ見て帰る人、アテンションも展示詳細も両方見る人、双方への対応を考えたい。

大井副委員長
P.23に、参考資料として東館の情報更新のあり方が示されている。こういう手法をベースとし、来館者層ごとの展示の見方、動線の巡り方のちがいを整理し、アテンションを含めた情報の3層構造のあり方を考えることになる。その関係をもう少し整理する必要がある。
展示する内容に応じた手法をそれぞれに考えていくやり方もあるだろうが、東館全体を通じてのアテンション、その次のステップ、詳細情報のステップに至るまで、トータルな展示としての精神が流れていれば良い。一つの展示項目に対して一つの手法を当てはめるのではなく、もっと融通の利いた展開にすれば有効な手法になるのではないか。資料の作り方として難しいのかもしれないが、委員の方にわかるようなシンプルな見せ方ができないか。
A・B案を平面図的に当てはめた時のボリュームが示されているが、むしろそれよりも、アテンションのあり方と資料館・東館の展示内容や、どういう見方で何を学習してもらうかという視点が含まれたものになるのではないか。そこが見えないとなかなか固まっていかない。石丸委員が言われたように、そこのコンセプトがきちんと見えることが必要。

静間委員
全体のウェイトとして本館が3割、東館が7割くらいの印象である。本館と東館が別の展示館であるかのような印象を受ける。主旨としては本館がメインで、東館はそれに付随した展開だと思う。それを整理した方が良い。
「核兵器の危険性」では、兵器の開発から、広島に原爆が投下された歴史的経緯を取り上げるが、今は受け身的な紹介である。原爆投下を回避できなかったかという見方もある。回避の可能性はゼロではなかった。福島の原発事故もそうであるが、起こってしまったことは取り返しがつかないが、防ぐ手段はあった。広島の原爆の場合もそういうことに触れられれば教訓になる。

大井副委員長
本館と東館のつながり感や展示手法が、かけ離れ過ぎないようにする。先程の導入部分での資料館からのメッセージが、本館・東館を通じて展示から読み取れるよう検討が必要。今日的な情報や、世界情勢も含めて上手く調整していくことになる。展示の3層構造を含めてストーリーが整理されないと、この段階でA案、B案のどちらかを選べないであろう。

丹青社
今回、空間的なボリュームと情報構造の両方を提示しており、空間が見えることによって逆にストーリーが見えにくくなっているのではないか。整理して次回提示させていただく。

大井副委員長
展示資料の内容、見せ方、配置などの詳細は資料館側と詰めていく必要がある。A・B案を調整して、東館のコンセプトを伝えるよう精査して欲しい。

石丸委員
B案のアテンションは、説明用に示しているのだろうが、(メッセージの表現によっては)強く反発する人が出るのではないか。中庸な表現であったり、学習に役立つのであれば良いが。

大井副委員長  B案は、資料館との調整や注意が必要。ここまで(具体的に)表現しなくても、ストーリーによって理解される。


【その他 「東館1Fフロアプラン」、「展示解説サイン計画」について】

【丹青社】
東館1Fのゾーニング、展示解説サイン計画について説明。

大井副委員長
東館1Fゾーニング、展示解説サイン計画についてご意見があればお願いしたい。

大澤委員
表に書かれていない部分であるが、本館「放射線」は神谷委員のご意見に従って急性障害・後障害に分け、「魂の叫びの場」ではPTSD(心の傷)にも触れた方が良い。静間委員の話に出たが、テロや原発など、核兵器だけではない部分にも触れるのか。文字として記載しておくかどうかを確認した方が良いのか。

水本委員
核兵器だけではなく、核エネルギーも含むことに共通認識があれば良い。核には民生利用と軍事利用があることを含めたものにリライトした方が良い。
先程の静間委員の意見だが、原爆投下を防げなかったかという視点を入れることは考えられる。この表は基本計画に沿っているが、その視点を入れることは可能だろう。アメリカは原爆を実験的に使用して戦争を終わらせたかった、ということがあまり反映されていない。一方、日本の戦争責任として早く和平と停戦にこぎ着けていれば原爆投下はなかった。そういう部分を取り込むことによって、日本の戦争の問題にも言及できる。戦争総体のことではなく、原爆投下に繋がってしまった日本の戦争、という視点からテキスト(解説文)に上手く取り込んでも良い。中身の話になるが、基本計画に乗っ取りながら、そこは検討しても良いのではないか。

大井副委員長
東館に関しては、展示の手法の骨組み、動線、展示の内容についての課題があり、整理しにくい状況である。ただし展示の手法と内容をそれぞれをバラバラに考えない方が良い。大変かもしれないが調整をしながら、実施設計に役立たせるものにして欲しい。
本日ご欠席の委員からご意見がある。

事務局
「都市の壊滅」について、最近の展示には生々しさが欠けてきたという声をよく聞くので、生々しさを出したい。
サイン計画については、キャプションの文字の大きさ、特に英文が小さくて見にくいので留意して欲しい。
以上、2点である。

大井副委員長
まだまだご意見があろうかと思う。お気づきの点は事務局までご連絡いただきたい。また、全体を通じてご意見はあるか。

石丸委員
東館は、現在の展示量がかなり縮小される。もったいないというか、利用できないだろうか。かなり内容を省略することになる。現在の「戦前の広島」「被爆前の広島」の展示が、1コーナーくらいに小さくなってしまう。なぜ広島の原爆が投下されたかの解説など、現在の展示内容が省略されるかと思うと割り切れない。

大井副委員長
本館と東館の展示が分断されないように考えることは当然であるが、東館の展示スペースは小さくなってしまう。その点は配慮が必要だが、欲張りすぎて的外れにならないよう、両方の調整をしながら進めなくてはいけない。この段階では、実施設計に向けての流れを決めるが、これから資料館と丹青社の詳細な摺り合わせによって詰める必要がある。


【事務局】
今後のスケジュールを説明

《閉会》