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第6回 広島平和記念資料館展示検討会議要旨

1 日時

平成23年(2011年)6月13日(月)10:00~11:50

 

2 場所

広島国際会議場3階 研修室(3)

 

3 出席委員(9名)

今中委員長、大井副委員長、水本副委員長、宇吹委員、大澤委員、神谷委員、

静間委員、賴委員、リーパー委員

 

4 事務局(9名)

平和記念資料館 前田館長、増田副館長、山根副館長、大瀬戸主任、落葉学芸員、

福島学芸員

市平和推進課 石田被爆体験継承担当課長、井手口主任技師

広島平和文化センター総務課 三好課長

 

5 丹青社(3名)

藤井部長、深野チーフデザイナー、島プランニングディレクター

 

6 議題等

  「本館展示」について

 

7 公開、非公開の別

公開

 

8 傍聴者

報道機関5社ほか3名

 

9 会議資料名

第6回広島平和記念資料館展示検討会議次第

「広島平和記念資料館展示基本設計業務」検討資料

 

※会議資料は、広島平和記念資料館学芸担当(広島市中区中島町1番2号:広島平和記

念資料館東館3階)でご覧いただけます。

 

10 会議の要旨

 

《開会》

 

【丹青社】

基本案(プロポーザル案)に関する課題を整理し、A-1からA-4まで4つの比較検討案を説明。

【議題 資料を基に「本館展示」についての説明】

 

今中委員長

丹青社の説明に対して、御質問・御意見等あればお願いしたい。

 

水本委員

4ページの解説のあり方について映像やグラフィックと被爆資料を対峙させて書いてあるが、A-1からA-4までの4案の場合、どのゾーンがグラフィックや映像で、どのゾーンが被爆資料の展示なのか、図面からは読み取りにくいので、それについて伺いたい。

 

丹青社

4案はゾーニングと空間イメージを配置したもので、ゾーン内の展示演出は具体的に詰めていない。3ページの基本案はプロポーザル時に提出したもので、「②人の被害」で大型映像を配置したり、各所に証言映像やグラフィックを点在させる案である。それについての見直し点も含め、解説や映像が(多過ぎると)、来館者がストレートに被爆資料と向き合うことの妨げになる可能性もあることから、慎重に配慮する必要があるという意味である。

 

水本委員

解説の比重のかけ方の検討とは、A-1からA-4までのどの案が映像に適している、といった意味ではないということか。

 

丹青社

そうである。

 

今中委員長

5ページの「安全性向上のための手摺り取り付けの検討」とは何か。

 

丹青社

資料に近寄って見たい来館者が展示ケースのガラス面に手をつく可能性がある。それを防止したり、高齢者の歩行補助とする意味がある。安全面を考慮し、手摺りの検討を提案する。

 

今中委員長

スペースに影響を与えるのか。

 

丹青社

影響する。

 

今中委員長

A-4は、本館展示にパノラマ模型を入れるためだけの案か。

 

丹青社

そうである。

 

今中委員長

本館にパノラマ模型を入れるとしたら、A-4案の位置しかないということか。

 

丹青社

そうである。パノラマ模型は大きなスペースを必要とするので、現在の細長い展示空間の中で配置が限定される。それを確認するためにA-4案を作成した。
 

静間委員

パノラマ展示を残すか、残さないかの議論があったのか。

 

今中委員長

結論は出していない。パノラマ展示の機能は資料館にとって必要だと考えられる。その機能を本館に設置するか、導入部にするか、2つの方向性がある。

 

静間委員

館長が来館者に説明を行う際に、パノラマ模型が活用されている。パノラマ模型の機能は必要だと思われる。

 

今中委員長

必要性は理解しているが、それを導入部に置くか本館に置くか、位置は未定である。

 

静間委員

導入部に置く場合、12ページに示された位置(東館導入展示)になるのか。

 

丹青社

そうである。

 

今中委員長

導入部に置くと、現在のパノラマ模型のサイズよりも小さくなるのか。

 

丹青社

現在のパノラマ模型と同じ大きさで、配置案を作成している。

 

大澤委員

A-1からA-4までの4案について。A-1では「人の被害」が「都市の壊滅」よりも前に配置されている。A-2からA-4では、「都市の壊滅」の後に「人の被害」を配置している。どういう考えで違いを出したのか、教えて欲しい。

 

丹青社

「人の被害」と「都市の壊滅」のどちらを先に見せるかである。A-2の「都市の壊滅」は、一瞬にして都市が破壊されたことを熱線・爆風などを含めてまとめて見せることで印象づけ、都市の中に人も存在したのであり、その中で人の被害も伝える構成である。A-1に比べて「都市の壊滅」がより強調された展開となる。「人の被害」と「都市の壊滅」のどちらかを優先するということではなく、どちらも「8/6のヒロシマ」を構成する要素として同じウェイトで扱っている。

配置が変わることで、展示全体に大きな影響が出る訳ではない。あくまで、冒頭でどちらに着目させるかである。

 

大澤委員

たとえば原爆投下によるきのこ雲を大きく表現して、その後に「都市の壊滅」にズームしていき、都市の中で生きていた人達の「人の被害」を示し、さらにもっと深度のある被爆資料に近づいていき、原爆による健康被害にふれるといった、段々と「人の中身」をクローズアップしていくような流れではないのか。印象づけることが主眼か。
 

丹青社

特にそういうことではない。

 

大井委員

展示ストーリーの展開について、11ページに基本案と参考案が提示されている。参考案については、展示品や遺品などの配置まではまだ検討されていないが、この場で、どの構成と空間が最も適切か検討したい。基本計画通りに進めると、基本案(プロポーザル案)となるが、基本案に対して丹青社から参考も別途提示されていることから、どの案で進めるかを摺り合わせできれば。ストーリー案で空間構成が決まってしまう。いくつかの案の中から、一番はまるものを選択したい。

コンセプトを整理した1ページ目に、「特に本館では来館者に感じてもらうことを重視する」とあり、ここが最も大きな前提である。その次の2ページにプロポーザル案が提示されており、この案は基本計画に忠実である。「被爆の実相」を「8/6のヒロシマ」と「被爆者」にテーマ分けしている事に従って、空間も「8/6のヒロシマ」と「被爆者」に分けており、来館者に「被爆の実相」を感じ取ってもらう空間としてそれが良いかどうか。

「8/6のヒロシマ」は「被爆者」も含むことはできないか。都市も人も壊滅したことは共通で、分ける話ではないのでは。「都市の壊滅」は単に建物の被害だけではなく、放射線被害もあり、また街は人が生活している場所で、そこが破壊されたのである。「8/6のヒロシマ」と「被爆者」を、被爆の実相を感じられるひとつの空間として構成することで、来館者に感じ取ってもらうことができればと考える。レイアウト案の中で、どうすれば最も来館者に感じ取ってもらうことができるか。ここをもう少し整理する必要がある。

 

今中委員長

大井委員の今の意見を示した提案はどの案になるか。

丹青社

A-2が近い。「都市の壊滅」を印象づけながら、「人の被害」がその中に埋め込まれて見える展開である。ゾーンとして明確に分けず、都市の中に「人の被害」を入れ込んだ案である。

「都市の壊滅」の見せ方として、資料を1点ごとにケース内に整然と配置するのではなく、空間全体から感じ取れることが印象的な展示に繋がると思う。その中で、「人の被害」が埋もれないように工夫は必要であるが、A-2は大井副委員長の意見のベースになると考える。

 

今中委員長

これまでの検討委員会では、「8/6のヒロシマ」と「被爆者」は別テーマとして分けており、それを基に丹青社が基本案(プロポーザル案)を作成した。この構成を再検討することになるか。
 

大井委員

提案書に書かれているが、本館および東館の機能・コンセプトを空間としても明確に表現するという視点からみると、本館の空間コンセプトをできるだけ明確に来館者に伝えられる空間にしていく必要がある。時間経過を伝えたり、資料をしっかり見ていくことも重要であるが、そのことによって小さな空間がいくつもできてしまうのであれば、従来の展示とあまり変わらないものになってしまう。このままだとそうなる恐れがある。できるだけ本館の「被爆の実相」を空間全体としてしっかり表現して伝える必要がある。来館者に、8/6の「被爆の実相」を感じてもらい、しかも視点は「人」であることを、ひとつの空間として感じさせ、常に展示のコンセプトがブレないように展開する。A-2がそれに近いのであれば、本館全体の一体感としては少し弱い。

ストーリーからみて、「8/6のヒロシマ」と「被爆者」は、ブロックとして分けることはあるだろうが、見え方としては「人」だったり、8/6の実相だったりする。それを考えないと、なかなかうまくいかないのではないか。

 

今中委員長

A-2は空間としての一体感がないという意見があったが、一体感が強いのはA-3か。「都市の壊滅」と「人の被害」が連続的に見え、空間が見渡せる案である。他の案は一筆書きの動線で小空間をなぞっていく配置である。

 

大井委員

デザインや設計的な手法にもよると思う。小さな壁が生じるのは、展示物が多くなればなるほど仕方がない面がある。特徴的な見せ方や展示で空間を繋いで連続感を持たせるなど。空間構成の方針として、テーマを踏まえて本館全体の一体感を出すことは不可能ではない。それを切って捨ててしまうか、コンセプトとして守るかで、大きな違いが出る。できればコンセプトとしたい。この点は、本館のあり方としてこれまでにはない視点からの検討である。

 

事務局

今の大井委員のご指摘について。基本計画では「8/6のヒロシマ」と「被爆者」に大きく分け、さらに「8/6のヒロシマ」を「原爆投下・爆心地」「都市の壊滅」「人の被害・放射線障害」に細分化している。ゾーン分け(小さく分かれていること)が、それらの項目を入れていることに起因する面もあると思う。A-2案で、項目ごとに空間を区分するのではなく、まず「8/6のヒロシマ」として構成し、その中で各項目に触れていくようにすれば、ご指摘の点は解消するのではないか。

 

大井委員

1ページの「被爆の実相」に「8/6のヒロシマ」と「被爆者」がある。これは言葉だけの区分ではなく、常に空間をどう構成するかも考慮する必要がある。曖昧な言葉で書いているのであれば、それを空間として整理する。具体的な展示を想定しながら言葉の解釈を整理する必要がある。

 

水本委員

4ページのメリット、デメリットの中で、空間全体の一体感と細切れ空間について書かれているが、一体感をどう捉えるかである。資料館の役割は一般の美術館や歴史館とは違う。14ページに法隆寺宝物館の展示例があるが、これは美術品である。被爆資料については、必ずしも四方から見えるレイアウトにこだわる必要はないと思うし、15ページ右側の例も、仙台市博物館のように資料を集合的に並べた展示には適しているのだろう。被爆について何があったのかを1つ1つデータを示して、来館者に中身を見てもらうことが望まれる。空間の一体感と同時に、1つ1つの展示にきちんと向き合えることが大事。空間が少し細切れになっても、そこに置いてある内容を汲み取ってもらい次のゾーンに進んで行ければと思う。来館者に、展示の1つ1つに向き合ってもらうことが最も重要であり、A-1かA-2の方向が良い。A-3などは空間が散漫になってしまう。

 

大井委員

5ページの「デザイン的視点」では、2の1)の小項目1行目「来館者が展示資料を真正面から見られる展示構造とし、より多くの遺品展示がのぞまれている」と、2の2)の小項目2行目「被爆資料 実物しか持ちえないメッセージを引き出し伝える」この点は重要。水本委員が言われたように、向き合うことでどのような環境作りが必要かといった視点がベースにあれば、たとえ小部屋になったとしてもひとつの繋がりとして全体感は伝えられるのではないか。

5ページの2の1)、2)を踏まえた資料展示の方法で、8/6の被爆の実相がどのようにうまく伝えられるか。リニューアルするのだから、現在の来館者だけではなく、今後20~30年先の来館者に向けての課題であり、検討しなくてはいけない。いくつかの展示パターンが示されているが、どれがベストか。今回決める案が今後20~30年間の展示のベースとなる。本館に関して言えば、実物しか持ち得ないメッセージをどれだけ引き出せるか、どのように見せたらいいか、という点が一番大事。展示についてかなりのアイデア、提案が必要だ。委員会の方針に近いのは当然基本案だが、言葉としての表現と空間の実態をどう整理するかはこれからである。

5ページの「1東館との意味と機能の分化」について、これは慰霊碑など公園側に広がるスペースをどう位置づけるか、東館の導入展示も詰めていきながら、もう一方で同時に本館も検討する。両面から詰めていく必要がある。それを考慮すると、できれば本日、展示についての方向性は出したいと思う。

 

今中委員長

どの案もメリット、デメリットがそれぞれにある。通常はメリットだけで案を組み立てていくが、今回はそうならない。どの案も必ずデメリットが出る。昨年度まで検討してきた基本計画に沿った基本案を含め、できれば本日の検討で、どの方向性にするかを定めたい。
 

神谷委員

静間委員も言われたが、パノラマ模型は東館の導入部に設置し、本館には置かないことで良いか。

 

今中委員長

これまでの委員会の検討では、パノラマ展示は本館ではなく導入展示に設置する方向である。

 

神谷委員

導入展示にパノラマ模型があり、本館に入って「8/6のヒロシマ」と「被爆者」という構成は、導入展示と本館が分断されるのではないか。全体像を概観させるのにパノラマ模型はわかりやすいが、概観させるのと本館展示の内容がダイレクトに繋がっていた方が良いのでは。実際に館長は模型を使って説明されているが、表現のしやすさ、実際の案内経験から見てどうか。

 

事務局

今後のことについての指標にはならないと思う。現在は本館にパノラマ模型が置いてあり、そこで原爆被害の全体像、被爆時の広島の人口がどのくらいで、年末までに何人が亡くなったか等の概要を説明している。今ある模型でできる範囲で来館者に説明している。今後の本館は、概要を伝える展示ではなく被爆の実相を伝える展示になる。

 

大井委員

現在のパノラマはすごく「模型」っぽく感じてしまう。当時の更新計画が始まった時に、いろいろなメディア向けの撮影や取材の場所として必要だという認識があった。良くできているのだが、単に街が壊れただけではなく、放射線など普通の爆弾とは違う状況によって街が壊れていった。3D的な表現なども用いて、次の時代のパノラマを研究してはどうかという話が、大学の先生の間で以前あった。現在のままの模型では上手く伝わらない。

 

今中委員長

映像にするのか。

 

大井委員

今の模型は動かずまったく変化がない。時間経過を表現するような映像的なものや3D的な手法も可能ではないか。平面画像ではなく立体映像やホログラムなどによって、放射線のように目に見えないものを表現することは可能なのではないか。現状のパノラマでは、建物が無くなって街が平板になったことだけでは、インパクトや伝え方が弱い。

 

神谷委員

パノラマが模型のような印象がある点は、同意である。大井委員のご指摘のようにリアルなイメージがあれば。

 

水本委員

パノラマ模型は、本館に行く前の導入部にあれば良いのでは。基本計画は、導入部をさらっと通ってもらい、早く本館に入って、本館でしっかり見てもらうという方針で作成した。11ページのC案は、導入部の展示をやりすぎると、導入で滞留してしまう。

「8/6のヒロシマ」と「被爆者」は項目としては分けているが、1つ1つの展示を分けることまでは考えていないので、それがオーバーラップしても可だと思う。そういうコンセプトを含んで、効果的な展示をするという方向性で良いのではないか。ただ、8/6に何があったかをインパクトを持って伝えるテーマとして「8/6のヒロシマ」は必要。被爆者の苦しみなど、8/6に収まりきれない内容は「被爆者」で紹介する。テキストの構成の仕方など、中身の議論で精査できるのではないか。基本案と参考案では、基本案をベースとして良いと思う。

 

今中委員長

これまでの委員会を通して、パノラマ模型はどこかに置きたいという方針である。震災被害にあった陸前高田の子どもがパノラマを見て「ヒロシマと陸前高田はまったく同じ状況だ」と言った。映像手法もあると思う。今の若い人や子どもは映像に馴染んでいる。

 

静間委員

基本案に比べて、展示物はかなり少なくなる。展示できる大型資料は、「人影の石」ぐらいかと思う。展示される物がほとんど決まってしまう。パノラマを本館に入れるのは無理がある。破壊されたものが展示されれば、それだけでヒロシマの破壊が見えるのではないか。導入展示にあまり長く滞留するのはおかしいが、導入展示の機能は残して本館とうまく繋げられないか。

 

今中委員長

事務局から何か意見はあるか。

 

事務局

色々な考え方があるが、A-1かA-2が良いのではと思っている。A-2がより良いのではないかと考える。7ページの図(A-2)では、現在のパノラマ模型があるあたりに広い空間を設け、都市の壊滅を示す資料を集合的に並べる感じである。全体が一瞬にして破壊されたことを示している。本館のいちばん最初でシンボリックな印象で見せることができる。資料の1つ1つと向き合うには、ある程度は空間を分ける必要があるのではないか。そうしたことからA-1かA-2。A-2がベターかと思う。

 

今中委員長

大井委員から、A-2は一体感がないという意見が出た。A-2をベースに、どのように本館の空間に一体感が出せるかを丹青社に検討して欲しい。

 

丹青社

了解した。

 

今中委員長

A-2で一体感が出せれば、それも悪くはないということか。

 

大井委員

いくつかの案が提示されており、その中で委員会の方針にいちばん近いのはA(A-1からA-4の4案)であるが、空間としての一体感がないのが気になる。コンセプトも一体、空間も一体という精査が必要。かなり調整しながら進めていくことになる。

「観覧後の心情に配慮した場」の扱いも検討が必要。A-2ということであれば、それにコンセプトを近づけて調整して欲しい。

量をたくさん見せたい面と、感じ取ってもらう仕掛け、仕組みをどう盛り込むか。

 

リーパー委員

人をよくご案内する立場から言えるのは、展示を頭の中で整理するためには時間の流れが非常に大事だと思う。全体像を導入展示にまかせて、そこでパノラマを見せる。普通の何でもない晴天の日に飛行機が来て原爆を落とし、以前あった街が完全に無くなったというストーリーを描く。

そのあと本館に入ると時間の流れ。以前は、放射線は後で発生したように扱っていたが、今は放射線が先に発生したという認識。原爆から先に放射線が出て炸裂し、きのこ雲が立ち上がる。その前にピカっという閃光があって熱線で3000℃~4000℃になり、影響が出たなどを伝える。

時間を使ってその全体像を頭の中で整理しているのは私もそうであるし、案内される人もそうしているのではないかという印象を持っている。時間(の流れ)についてよく考えていただきたい。

 

水本委員

「都市の壊滅」と「人の被害」についてであるが、「都市の壊滅」は人間とは無関係な無機的な都市の破壊ではなく、「都市」と「人」はスケールの違いで、都市の中には当然人間もいる。個々の人の被害もあれば、全体の被害もある。その流れを理解して展示をしていただきたい。人の被害は後から生じたものではない。言葉の問題ではなく、都市の壊滅の中に個々の人の被害もあることを展示する、というコンセプトでいけば問題ないと思う。

 

大井委員

前回、前々回くらいに委員の方から、空間がわかりやすいCGや、簡単な模型を作れないかという話があった。委員会で簡単な検討ができるような模型があるとわかりやすい。一体感などの検討をしたい。

 

丹青社

用意する。

 

今中委員長

リーパー委員から、時間的経過があった方が良いという指摘があった。あまり複雑にせずに、ここで何が起こったか、どうなったかを、学生や中高生に伝える。

本日欠席されている坪井委員から、「被爆者の立場から、原点にこだわって欲しい。今は、作り物になっている印象がある。展示してあるものの何倍も、何十倍も悲惨な状況が実際に起こったことを伝えて欲しい」という意見があった。

遺品保存のためのケースは、今後の何十年後のことを考えると必要。

 

宇吹委員

理屈では、一筆書き動線であれば全部を見ていけるのだろうが、現実的には展示を両面から見るために引き返さなくてはいけない。どこの博物館でもそういうことを感じるが、何かうまい手法はあるか。

 

丹青社

動線の両方に展示があるとそうなってしまう。両面ではなくどちらかに正面性を持たせれば、動線を行ったり戻ったりするのは避けられる。今回は、動線が混乱しないよう十分工夫する。

 

宇吹委員

修学旅行生対象なら、一筆書き動線は良いのかも知れないが、何回も来館している人は、混雑時には動線に沿って見るのではなく展示をスキップして見たい時があるのでは。資料館では難しいが。これまでの例でいえば、案内していても混雑時は入口で身動きが取れなくなり、ネックになっている。展示をピンポイントで、遺品だけ見たい人、被爆者の絵だけ見たい人などもいると思う。見られるようにするのは難しいのか。

 

事務局

前提として、本館を途中でスキップする動線は考えていない。本館を見て東館を見ずに帰る動線は、委員会の経緯をふまえて検討することにはなっている。スキップ動線を作った方が良いというお考えか。

 

宇吹委員

A-3は、スキップ動線を考慮した案かと思う。

 

今中委員長

観覧者の中には、じっくり見たい人と修学旅行生のように流れで見ていく人がおり、どちらを取るかは難しいと思う。丹青社から何か意見はあるか。

 

丹青社

A-3は回遊動線、または短絡動線で、スキップ展示には対応している。ただし、初めて見る人には、どういう順番で見ていけば良いのか、混乱を招きやすい。床に「こちらが主動線」「こちらは回遊動線」などと表示すれば別だが、それはできないであろう。今回のような展示の場合、通路幅をゆったりと取り、通路がふさがって前に進めない等が無いよう十分に配慮した上で、一筆書きのA-1、A-2をベースに動線を考えた方が良いと思う。短絡動線を作ったために動線の混乱を招いてしまう恐れがある。

当社としてはA-1、A-2のように通路をゆったりと確保し、展示ケースの前に人が滞留しても、その後ろを抜けて通行できるように工夫した方が良いと考える。

 

今中委員長

案を集約すること、一体感を出すこと、などの意見が出された。今年は4回の委員会が想定されているが、今後細かい検討が必要であり4回の委員会で検討を尽くすのは難しいかもしれない。

 

水本委員

4回にこだわらずに、委員会をもっと開催しても構わないのではないか。

 

今中委員長

日程調整も必要であり、年末までに何回開催できるかである。全体を通して、何かご意見があればお願いしたい。

 

水本委員

もともと細長い建物なので、一体感といっても限りがあると思う。展示物が来館者の目線より下にあるので、目線の上の展示はあまり見ない。展示空間の上部を使うことも検討して欲しい。火球を上部に展示しても、見られていない。

展示空間の上部を上手く活用して、下から見上げたイメージなども提案して欲しい。

 

丹青社

検討する。

 

今中委員長

次回はA-2案に集約して、一体感を出すために検討を進めて欲しい。本日はありがとうございました。

 

【事務局】

今後のスケジュールを説明

 

《閉会》