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第5回 広島平和記念資料館展示検討会議要旨

1 日時
平成23年(2011年)3月25日(金)14:00~15:55

2 場所
平和記念資料館東館地下1階会議室(2)

3 出席委員(10名)
今中委員長、大井副委員長、水本副委員長、石丸委員、宇吹委員、大澤委員、静間委員、坪井委員、賴委員、リーパー委員

4 事務局(8名)
平和記念資料館 前田館長、杉浦副館長、山根副館長、大瀬戸主任、平田主査、落葉学芸員、和田主事
市平和推進課 井手口主任技師

5 議題等
(1)  「観覧後の心情に配慮した場」、「平和記念公園の解説」、「企画展示」、「ミュージアムショップその他」について
(2)  展示全体について

6 公開、非公開の別
公開

7 傍聴者
報道機関3社ほか4名

8 会議資料名
第5回広島平和記念資料館展示検討会議次第
資料1 本館配置図
資料2 東館1階、3階配置図
資料3 「観覧後の心情に配慮した場」
資料4 「平和記念公園の解説」
資料5 「企画展示」
資料6 「ミュージアムショップその他」

※会議資料は、広島平和記念資料館学芸担当(広島市中区中島町1番2号:広島平和記念資料館東館3階)でご覧いただけます。

9 会議の要旨

《開会》


【事務局】
現在の本館、東館の諸施設の画像をスライド上映しながら説明。

【議題1 資料1~6を基に「観覧後の心情に配慮した場」、「平和記念公園の解説」、「企画展示」、「ミュージアムショップその他」についての説明】

今中委員長
事務局の説明に対して、御質問・御意見等あればお願いしたい。まず、「観覧後の心情に配慮した場」について議論いただきたい。

水本委員
2ページのイ「表現したり人とのふれあいができる空間の機能と整備方針」は、最後の常設展示を観覧した後の空間を想定していると思うが、インターネットでの検索、電子メールの送受信のためのパソコン配備などは必要ないのではないか。このような機能は情報資料室に持たせる方が良いと考える。メッセージを発信したい人の多くは携帯メールを使用すると考えられ、心情に配慮した場に皆が留まり、メールを発信するという状況は想像しにくい。外へ出て公園内でメールを発信したり、旅行者であればホテルから発信するなど様々な状況が考えられるため、心情に配慮した場に細かい想定をし過ぎなくても良いのではないか。 
資料2の図面は、一つのたたき台として空間が区切ってあるが、もう少し自由な発想で、全体を再構成する感じで空間を区切っても良いのではないか。この図面にはないが、東館1階北側の売店の使い方も今のままで良いのか。現在と同様の商品を置き、自動販売機や土産物がある雑然とした空間で、バスの運転手の待ち合わせ場所となっている。売店やロビー空間を含め東館1階全体を再利用するコンセプトを考えた方が良いのではないか。「観覧後の心情に配慮した場」を一つの空間に押しとどめるのではなく、ロビー全体を含めて見直しをした方が良いと考える。
また、現在、ロビーに様々な物が置いてあるが、本来の資料館の目的に合致してないものもある。例えば、大邱から寄贈された太鼓の展示は、それによりデッドゾーンとなっている。これ以外にも記念碑などはここに置くべきなのか、また移動すべきなのか再考すべきである。チケット売り場のブースや壁も撤去できれば、かなり広いスペースをオープンにして考えることが可能である。参考資料に示してある東館1階の派出所も、8月6日のために県警からここに派出所が置かれているようであるが、普段は使用されていないため、この部分も一つの空間と捉え、上手く利用するのも良いのではないのか。ミュージアムショップも壁面に囲まれた四角な空間で区切るのが良いのかどうかデザインも含め、自由な発想でもう一度考えてみれば良いのではないか。

今中委員長
資料2で言えば、企画展示がかなり大きなスペースを取っているが、この程度のスペースがあってもいいとお考えか。

水本委員
最初から壁面で囲まれた構造ありきではなく、また展示空間が壁面で囲まれた四角な空間が最善とは限らないため、企画展示の場所も含めて考える必要がある。ロビーの階段から地下へ降りる階段や地下1階のロビー空間も含めて一帯の空間として考えることも可能ではないか。

石丸委員
「観覧後の心情に配慮した場」は2か所あるが、最初の方は、まだ展示が続くことが見通すことができる空間である。立ち止まって考えたり、ゆっくり歩く人はいると思うが、本格的に考える場所になるかどうか。見通しができ、向こうに展示物があると分かる空間で座って何かをする人は少ないのではないか。中途半端な空間になる恐れがある。最後の空間で本格的に取り組んだらどうか。

大井委員
水本委員の東館1階のレイアウトに関する意見に同感する。現在案としてゾーニングしてあるが、東館1階の使い方はもっとオープンに使うべきと考える。今回の更新計画の中で東館1階の役割と意味は大きいものがある。展示の検討会議内のみでなく、建築設計との調整もかなり必要である。壁や区切りなども動かせるような状況で作った方が良いのではないか。入口付近の作品の扱いも考えなければならない。平山郁夫先生の陶壁画のタイルの色も褪せて劣化しているように感じる。東館1階の使い方と芸術作品の関係性を、作品の劣化のことも考慮に入れ考えなければならない。東館1階のレイアウトに関しては、企画展示の内容、ミュージアムショップの性格、そこのスペースに心情に配慮した場をどのように組み込んでいくかなど、実施段階の中で具体的な案とすり合わせながら進めた方が良い。 
資料1の「観覧後の心情に配慮した場」は、石丸委員の指摘にもあったように、通路としての性格が強い。東館とは異なり、一つの大きな空間となるため、この空間内で気持ちを和らげたり整理してもらうために、どのように空間を考えていくのか、相当技術がいることである。現状では雑多なものが混在してお
り、「観覧後の心情に配慮した場」と正反対の状況である。具体的な形・空間としてのイメージが一番わきにくい。どのような業者が担うか分からないが、設計と調整を重ねていく必要がある。また、平和記念公園の丹下構想の扱いも、どのスペース、どれくらいの分量、どのようにというのが重要になる。この場所が適切であるかももう少し考えた方が良い。

水本委員
資料2では、東館1階と3階のゾーニング案はあるが、あわせて東館地下1階のゾーニング案も見ながら1階として検討した方がより良いので
はないか。

今中委員長
東館の地下1階は現状図だけで、ゾーニング案は用意していないのか。

事務局
今回用意していないため、基本計画の25ページに地下の空間が分かるものがあるので取り急ぎコピーを用意する。

静間委員
現状では本館を観た後、「観覧後の心情に配慮した場」があり、出口を出て帰ることになるが、今回の改修では、東館の展示に戻ることになる。「観覧後の心情に配慮した場」は、本来であれば、東館1階の空間に設けられるべきであるが、それにしては狭すぎる。企画展示のスペースぐらいを「観覧後の心情に配慮した場」にすべきである。本館と東館をつなぐ仕組みを注意しなければ、同じような場所が2か所となり、来館者は混乱するのではないか。

今中委員長
「観覧後の心情に配慮した場」に関しては、色々意見が出たが、本館のこの空間を「観覧後の心情に配慮した場」にするというこだわりがあるのは、慰霊碑に向けての眺望であると考える。そのような場に設定していなくても、慰霊碑を望む空間を見ながらゆっくり歩いていくというのが現状であるため、心が安らぐ場所であることに間違いはない。機能を多様化し過ぎるのは問題があるという指摘と考えられる。落ち着くためには簡素な方がよく、今ある署名簿などの要素を全て盛り込むのかということも含め、もう一度整理した方が良い。心情を和らげる場所としてはあの場所を生かしたいと思うが、意見も出たので、事務局で再度詰めてから諮りたい。

賴委員
委員長の意見に賛同する。案では休憩スペースにならないように工夫するとあるが、ソファーやイスなどを設置し、少し座って北側を見るような場所があっても良いのではないかと考える。

坪井委員
一言で言うなら、コンパクトでなければならない。広々とした海外の記念館なら別であるが、広さに限りがある資料館では、何もかも詰め込むと雑多になり何かわからなくなる。 
最初の方の「観覧後の心情に配慮した場」では、来館者は、本館の現物資料を観た後で感情的になっていると考えられるが、疑問を持つようにさせるのが必要である。ここで解決して心を落ち着かせるようではいけない。なぜこのような残虐なことが起きるのかという疑問が残るような仕掛けの方が良いのではないか。その後、東館の展示を見、科学的な整理も出来てくるため、最後にメッセージなどを書いたりすれば良い。資料館から出た時に、具体的な行動として、被爆者の話を聞いてみようという気持ちになっていれば良い。また、祈念館へも足を運んでみようという気にさせる必要がある。しかし、祈念館は慰霊の場所であり、被爆者が行き、思いを新たにする場所でもある。それに近い思いをしたい人が祈念館へ行けば良い。今回の案は綿密に練られており、良いと考えるが、あまり多くを詰め込むことは必要ないと考える。

石丸委員
本館の「観覧後の心情に配慮した場」で、ゆっくり歩いたり、考えながら歩いたりするのは良いが、どの程度イスを置けるのかなど検討してほしい。東館の1階の方は、可能であれば閉鎖的な空間でなく、木々の緑が見えるなど外部と接することのできる空間にした方が良い。

今中委員長
中央部分ではなく、壁側に設置した方が良いということか。

石丸委員
東館1階の売店との関係もあると思うが、外部に接することができるのが一番良い。難しいかもしれないが、面積が少ないため中2階の構造も考えられる。

今中委員長
売店の場所は、改修の際にも現在地に固定すると考えているのか。

事務局
現在の場所に固定して考えなければならないというものではない。色々整理しないといけない問題はある。

今中委員長
警察官が待機する派出所も設置しなければならないのか。

事務局
派出所については、市役所の緑化推進部が管轄しており、現在協議を進めているところである。

今中委員長
常時使用していなくても、撤去することは出来ないのか。

事務局
以前、そのような交渉をしたことがあるが駄目だった。しかし、その時は今回のような大規模な改修は見込まれていなかった。現在の状況を話し、説明すれば、撤去できる可能性もあると考える。

今中委員長
警察は警備に対し責任感を持っているため、撤去は難しいかもしれない。

事務局
代替地を提案するなどすれば、話が進むのかもしれない。

今中委員長
この件については、流動的に考えれば良いのか。

事務局
その通りである。

今中委員長
「企画展示」について御意見等があればお願いしたい。

石丸委員
「平和記念公園の解説」の議論は省くのか。

今中委員長
御意見があればお願いしたい。

石丸委員
丹下氏のコンセプトをどのように見せるかというコンセプトが問われる。中途半端なものであれば意味がない。今回の資料にもう一度しっかり書いてもらいたかったし、耐えられる内容かどうか見たかった。また次の時に議論してもらっても構わない。

今中委員長
御意見があれば順番に進めていきたい。

大井委員
「観覧後の心情に配慮した場」と「平和記念公園の解説」の空間が重なり、当初の目的通りの心情に配慮した場になるのかが整理しきれず、気になってい
る。
あの場所は、軸線上にあるため、平和記念公園の理念、構想が一番よく分かる場所であると考える。心情に配慮した場も、こちらが計画した通りに来館者は感じたり、動いたりしないかもしれない。最初のコンセプトを空間にいかに活かしきるかということを一番重要に考えなければならない。その中でどう重なりあえるかは、手法の問題になってくるかもしれない。

石丸委員
様々な手法が考えられる。淡々と設計の内容を説明する方法もあれば、かつては賑わっていた場所が公園になったという、被爆の悲しみや怒りを含めた展示もあるかもしれない。未来の都市づくりに繋げるような展示をする方法もある。丹下氏の平和記念公園の設計コンペの思想をどのようなスタンスで見せるのかということが重要な問題である。

水本委員
設計理念も重要であるが、実際に目の前に爆心地が見えるため、展示を観覧し終わった人が現在の広島の街に思いを巡らせられるような、現在の平和記念公園についての説明があっても良いのではないか。実際の街そのものに関心を持ってもらうのも良い。爆発高度が600メートルなど、空間的にリアルに思いを巡らせる説明があっても良いと考える。

リーパー委員
実現出来るかどうかは分からないが、エリック・ハンソンという人物が興味深い提案をしてきた。

今中委員長
どういう人か。

リーパー委員
南カリフォルニア大学の映画芸術学部の教授である。彼のアイデアは、本館の廊下に展望台にあるようなビューアー(双眼鏡)を設置するというものである。そのビューアーを覗くと、バーチャルリアリティでその場所のかつての様子が見えるというものである。さらに、ダイアルを回すと、時代ごとの様子を見ることができる。1930年、1940年、火の海の1945年8月6日の被爆当時の状況、1950年などを再現することも可能であり、興味深いと考える。

今中委員長
設置台数にもよるが、通路空間として大きな役割をになっているので、修学旅行生がビューアーの周りで立ち止まる可能性も考えられる。

リーパー委員
彼の考えによると、10分100円など有料にすれば、それ程人は集まらないし収益にもなる。アメリカの発想かもしれないが、通常アメリカでは、エンパイア・ステート・ビルディングなどの展望台でも幾らかお金を入れないと見ることはできない。

坪井委員
原爆ドームは世界遺産であり、高さ制限があるため諦めたが、平面だけの平和記念公園よりも公園全体が見渡せる塔があるのも良いと思ってい
た。リーパー委員の提案はかなりお金がかかるのではないか。

大井委員
本館の展示壁面を作るために全て壁にしてしまったため、本館のギャラリー部分は展示室の壁の裏という印象をぬぐえない。基本的な造形をして、展示室壁の裏ではないと見せないといけない。実施する段階で空間づくりのベースをこの場で提示できるような状況をつくった方が良い。

石丸委員
全体の展示手法に関わってくるが、バーチャルの手法を取り入れるのか、一切排除して実物主義で勝負するのかどうか。バーチャルを使用し新
しい手法を取り入れるのであれば、情報も増え、面白くはなるが取り入れるときりがない。そこをどうするのかどうか。

大井委員
少なくとも本館に関しては、人間の視点から実物を展示するというのが委員会当初からの意見であったため、少なくとも本館については実物主義ではないのか。

今中委員長
基本計画もそのような精神であると思う。

静間委員
本館のギャラリーは癒しの場であるが、ただ通過すると、平和記念公園はきれいだという印象を持つだけで終わってしまう。中島地区の復元銅版はあるが、東館1階のパノラマ模型のように、原爆が投下されなければここは繁華街だったというのを展示し、現在このようになっているというのを訴えるものが必要ではないか。

今中委員長
それを東館でするのでは問題があるのか。

静間委員
東館では思いを巡らすことが難しいのではないか。特に小・中学生などは、最初に入ってパノラマを見て、その後本館を見て帰る時に、そこが繁華街だったということに気がつくかどうか。

石丸委員
以前、追悼祈念館の工事の際にはぎとった地層を展示してはどうかと提案した。砂浜の時代、明治、大正、黒くなっているのが被爆の時、戦後の埋め立てた後などよく分かる資料である。数多く瓦も出土しており、当時大勢の人々が暮らしていた場所というのが良く分かる。実感を持たせるような展示資料がまだあるのではないか。

今中委員長
簡素化するという意見もあれば、色々なものを盛り込んで複雑な構造にするというのもある。4月以降に、業者に図面を起こしてもらい、再度詰
めていくことになるかと思う。 
企画展示について御意見があればお願いしたい。

水本委員
東館1階の企画展示室と地下1階の展示室の使い分け等基本計画の時に触れていたか。現時点で特に方向性について示せるものがあれば伺いたい。

事務局
この案を作成した段階では、地下1階の展示室は、現在地下にある新着資料展、「市民が描いた原爆の絵」の展示を想定していた。

水本委員
企画展示室及び地下の展示室も壁面に囲まれた四角の空間に閉じ込めることを考えるのみでなく、1階のロビーから地下のロビー空間と展示室、それら全体を有機的に活用する可能性を視野に入れてアイデアが出ないか。 
現状では、地下に降りる人は明確に所在を知っている人で、初めての人は下りない可能性が高い。1階と地下が連動して気軽に下りることができるような仕掛けがあると良い。その事を念頭に入れて議論をしてほしい。

今中委員長
企画展示を1階の中心部に置いたのは、企画展示は修学旅行生や一般の方が、わざわざ地下に降りてみる人は少ないため、1階にあれば必ず人の目に留まるという考えである。地下の展示室と連動できるような仕組みを工夫できれば良いと考える。 
ミュージアムショップも含めて何か御意見があるか。

石丸委員
ミュージアムショップも中途半端であると感じる。もう少し平和研究、広島の資料を置き、資料だけ買いに来る研究者なども対象とした商品に拡大すれば魅力になるはずである。積極的にアピールするミュージアムショップであっても良いのではないか。

今中委員長
専門書に近い商品まで加えるとかなりのスペースが必要になる。ミュージアムショップは、不特定多数の観覧者が、手軽な値段で手軽に買えるものを置くところであると考える。専門書は地下の情報資料室に置くのが良いかもしれない。専門的な資料までミュージアムショップに置くのであれば、知識を持った人を配置しなければならないという問題も出てくる。

石丸委員
資料館に負けない程度の発信力を持たせることも可能なのではないか。ミュージアムショップのアピールは、内向きで弱いと感じる。

大井委員
企画展示をどう展開するかにもよるのではないか。ミュージアムショップで大きく商品を扱うような企画展示もあるかもしれない。企画展示とミュージアムショップが連動しているような企画展示を行う必要がある。地下の展示室へ繋げていくことは確かに重要である。現在、十分使い切れていない。労力も資金もいるが、地下を巻き込むような企画展示が必要である。集客のためには、その程度はしなければならない。

石丸委員
無理かもしれないが、本館の免震工事を行うのであれば、収蔵庫のスペースを本館の地下に大きく確保するという方法もある。企画展示を地下と連動させ、企画展示を半分地下へ持っていくこともできる。ダイナミックな設計をする機会であるにも関わらずそれを生かし切れていない。

今中委員長
免震構造にすればかなり空間が出来るのか。

石丸委員
東京の上野や大阪の中之島に例がある。基礎にダンパーをはかせるために掘る空間が3mから4m程度ある。それを後で再度埋めてしまう。

今中委員長
それをうまく活用した方が良いということか。

石丸委員
以前の検討会議でも伝えた。収蔵庫と展示室が遠くなり、搬入が難しい面はあるが。

水本委員
ビデオシアターは現在日本語と英語と分かれているが、レシーバーなどを使用すれば一つの空間で済むのではないか。ビデオシアターのスペースも一体の空間として使用できるかもしれない。可能性も含めて検討してほしい。 
また、地下の会議室(1)は縦長で、プロジェクターで映像を見せても小さくなってしまう。もし設計変更が出来るのであれば、再検討してほしい。

宇吹委員
情報資料室について、情報資料室内で検索するか、職員に聞けば丁寧に対応してもらえるが、開架式であれば情報量や利用する人も増えてくるのではない
か。長崎は資料館内に図書室があり、専門的に研究している人が多くいた。そのような配慮が欠けているのではないか。 
企画展のパンフレットは、内容豊富でかつ無料でもらえるが、展示している全ての資料が掲載されているわけでない。今回企画展では、貴重な資料が展示されており、目録の中に展示の一覧表を探したが掲載されていなかった。分厚い冊子に出来るような企画展をするのが良い。他施設では、大きな企画展は2千
円、3千円の図録を販売しており、それだけを買いに行く人もいる。研究者のニーズにも応えられるような、質の高い企画展の図録を作成し、有料にすることを検討してもらいたい。現在無料で配布しているものは、もう少し簡略化し、修学旅行生や子ども向けに見学の記念として残せば良いと考える。

今中委員長
多様な意見が出た。できる限り今後の設計の段階で反映させたい。東館1階は図面にある仕切りを取り払い、オープンスペースにし、考え直したら良いという提言があった。ゾーニングを多様に考えた方が良いというものであった。これまでに出た意見を十分反映するような形で事務局で再度まとめ直してもらう。今日からオブザーバーとして業者も参加している。4月から予算化されたため、適宜図面に起こし、詰めていきたいと考える。観覧後の心情に配慮した場、平和記念公園の解説、企画展示、ミュージアムショップについては整理させてもらう。 
展示全体を通して御意見があればお願いしたい。


【議題(2)  展示全体について】
石丸委員
広島の役割として、放射線被曝資料館という平和記念資料館とは別の新たな館をつくる構想をこの検討会議で展開してほしい。政府や保安院の情報は信用できない。核、原発のメカニズム、危険性、安全性などについて展示している施設は日本にはないのではないか。放影研、原医研と早急に協議してもらい、まずはパネル50枚を作成し、広島大学の旧理学部などの場所で展示する時期ではないか。この検討会議でそのような提案を打ち出すことは出来ないか。

今中委員長
大きな構想であり、時宜を得たものであるが、展示検討会議はそこまで間口を広げたものではない。新しいプロジェクトと受け止め、当検討会議で受け止め議論を発展出来るかどうか。

石丸委員
展示検討会議内で行う必要はない。組織を作る段階まで後押しし、新しい組織が動けばそれで良い。

今中委員長
石丸委員の意見について何か御意見があればお願いしたい。

静間委員
放射線の被曝の影響については、放影研、原医研が研究を行ってきたため、そこに行けば資料はある。しかし、展示をするとなれば、反原発の立場でということになる。あくまでニュートラルにするというのは難しいのではないか。そのような館を設立することには賛成であり、広島であるから出来る可能性はあるが、現実的には難しいのではないか。

大澤委員
これまで急性障害、後障害ともに展示は十分でないと指摘されている。内容を充実させる際に、放射線被曝について盛り込むことは可能ではないか。被曝についてテーマとして取り上げるのであれば、企画展示で行えば、来館者に興味を持って見てもらえるのではないか。

今中委員長
放射線に関しては専門の神谷委員が今日は欠席である。第2回の時に放射線に関する資料を充実させて展示したいという意見を提示してもらっているので、放影研や原医研の担当者で詰めて、練り上げてもらえると理解している。石丸委員の提言は、一大プロジェクトになるため、当委員会で議論したり詰め切れるものではないと感じる。提言があったということは広島市に伝えたいと思うがいかがか。

坪井委員
そのような館が出来れば良いと思うが、この会議や資料館では荷が重すぎるのではないか。
資料館を見学した後に、疑問を感じてもらえれば良いと考えている。資料館で何もかも全部というのは考えられない。放影研、原医研の方と話をすることがあるが、放射線についてはまだ分からないことが多い。放影研、原医研、大学のレベルまではこの会では難しいのではないか。

石丸委員
この会議でというわけではない。放影研、原医研などの組織と英知を結集しパネルを作成する必要があるのではないか。今は非常に重要な時期である。どういう問題が起きた時にどういうことが起こるのかという心構えを国民にしてもらわなければならない。

リーパー委員
放影研から、新しい資料館の中で放影研の研究成果を盛り込んでほしいと依頼されている。どの程度明確に言及できるかという問題もあるが、もし、基本的な情報を伝えられるのであれば、資料館で伝えるべきだと考える。 
最近、アメリカにおける報道と日本での報道にギャップがあり、何を信じていいのか分からないという話をよく聞く。マスメディアで独立した研究チームを立ち上げ、広島から事実のみを発信していくような機関があれば、広く貢献できると考えられる。誰を信じるかが大きな問題となっているため、信頼できる情報機関から、資料館が情報を得て展示出来れば良い。放射線についてもっと資料館で展示するべきだと考える。

水本委員
東館3階の「核の時代から核廃絶の時代へ」のコーナーで今起きていることは何らかの形で盛り込む必要がある。50枚のパネルでなくても、現代の問題として、核エネルギーの平和利用に伴う危険性について絶えず最新の情報をこのゾーンで触れるべきである。少なくともこのような形で扱うことは可能である。

今中委員長
第2回展示検討会議で意思確認をした。三機関で充実させるということで神谷委員にお願いしている。

石丸委員
入っているからというのでは不十分である。

今中委員長
放射線被曝資料館ということになると、検討会議とは切り離さなければ収拾がつかなくなる。別途、アピールをしたらどうか。

宇吹委員
私自身は、原爆被害の問題を徐々に専門的に個別に取り上げ始めた。東北の地震と放射線の被害を見て、スリーマイルやチェルノブイリでの事故は広島の一部分との関わりであったが、今回の事態は広島全体との比較で見えてきている。資料館の役割は、原爆被害の全体像を発信することである。物理的被害、心理的被害、地域の破壊、その後人間がどう動いたかなどの蓄積があるため、個別に取り上げるのではなく全体を発信していけるような体制をつくることが一番求められているのではないか。

今中委員長
放射線に関することでもその他御意見があればお願いしたい。

水本委員
資料2で、上りはエスカレーターだけであるが、その近くに階段があった方が安全性という意味では望ましいのではないか。東館の3階から2階、2階から1階へ降りる際、本当にエスカレーターが必要なのか。エスカレーターのみで上り下りするのは大変窮屈であり、大勢の人間が動く際に危険を感じる。エレーベーターが設置されているため、もう一度エスカレーターのみに頼る構造を専門的な見地から確認しながら進めてほしい。

今中委員長
基本的に今ある階段は全て残すということで間違いないか。

水本委員
入口のところはエスカレーターだけという考え方で間違いないか。

事務局
現行の事務室にあがる急こう配の階段をどうするかなどあるが、これから検討していく。

今中委員長
展示全体について言い残したことなどがあればお願いしたい。

水本委員
郷土資料館、現代美術館、広島城など、広島の中に幾つか被爆を伝える施設があるため、そのような施設とリンクしているということが来館者に分かるような情報発信の仕掛けも必要ではないか。ここだけで完結するのではなく、広島の街にいろいろなものがあるということを念頭においた仕掛けがあれば良い。

静間委員
そのような意味では、市役所の前の資料館や日赤の前の壁など、リンクをここでとれるようなものが何か必要ではないか。

水本委員
本川小学校、袋町小学校、レストハウスの地下も依頼すれば見学できる。そのような施設とリンクする必要がある。

坪井委員
平面図だけではなく、立体的な模型を作成してもらえれば展示についても検討し易いので検討してもらいたい。

大井委員
これまではCGなどで空間を説明してきたが、具体的に業者が決定すれば、ハードの確認をし、具体的な空間が分かるようなものを作成してもらえるが、現状そこまで到達していない。具体的な空間と今私たちが考えていることをどう擦り合わせていくかがこれからの大きな課題である。

今中委員長
今日の意見をまとめて、改めて提示したい。活発な議論ありがとうございました。 

 

【事務局】

今後のスケジュールを説明

 

《閉会》