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第4回 広島平和記念資料館展示検討会議要旨

1 日時
平成23年(2011年)2月9日(水)14:00~16:00

2 場所
広島国際会議場3階研修室(3)

3 出席委員(10名)
今中委員長、大井副委員長、水本副委員長、石丸委員、宇吹委員、大澤委員、神谷委員、静間委員、賴委員、リーパー委員

4 事務局(10名)
平和記念資料館 前田館長、杉浦副館長、山根副館長、大瀬戸主任、平田主査、落葉学芸員、和田主事
平和文化センター 三好総務課長
市平和推進課 澳被爆体験継承担当課長、井手口主任技師

5 議題等
(1) 核兵器の危険性(東館3階)の展示について
(2) 広島の歩み(東館2階)の展示について

6 公開、非公開の別
公開

7 傍聴者
報道機関7社ほか2名

8 会議資料名
第4回広島平和記念資料館展示検討会議次第
資料1 展示ゾーニング図(東館3階)
資料2 核兵器の危険性(東館3階)の展示構成
資料3 核兵器の危険性(東館3階)展示案
資料4 展示ゾーニング図(東館2階)
資料5 広島の歩み(東館2階)の展示構成
資料6 広島の歩み(東館2階)展示案
※会議資料は、広島平和記念資料館学芸担当(広島市中区中島町1番2号:広島平和記念資料館東館3階)でご覧いただけます。

9 会議の要旨

《開会》

【議題⑴ 核兵器の危険性(東館3階)の展示についての説明】

【事務局】
核兵器の危険性(東館3階)の展示について、資料1~3を基に、展示候補資料の画像をスライド上映しながら説明。

今中委員長
「核兵器の危険性(東館3階)の展示」の事務局の説明に対して、御質問・御意見等あればお願いしたい。

水本委員
基本的には全体の流れを踏まえて整理されているが、付け加えをお願いしたい。
「被ばく」にも「内部被ばく」と「外部被ばく」がある。それをどこかで取り上げてもらいたい。展示項目としては、「核兵器の拡散」の「核被害の実態と予測」になるかと思う。内部被ばくのメカニズムについても言及してほしい。また、劣化ウランの影響も核被害であるため、同じ項目内で展示することを検討してもらいたい。

静間委員
東館3階のエスカレーターの位置が(2)「原爆の脅威」と(3)「核の時代から核廃絶の時代へ」のゾーンの間にある。3階の展示を見ることなく、すぐ下りることができるという利点もあるかもしれないが、(2)(3)を見た人はまた戻ることになり、流れが停滞するのではないか。

今中委員長
資料1の図で言うと、来館者は順に(1)(2)(3)と進み、(3)から階段で2階へ下りるようになっている。

静間委員
エスカレーターと階段を並走して設置すれば、来館者はどちらかを選ぶことができ、人の流れもスムーズになると思うが、今の案であれば(3)を見た後に反転し、エスカレーターまで戻らなければならない。

今中委員長
事務局の方で補足説明はあるか。

事務局
御意見を踏まえて今後検討したい。

石丸委員
可能性としては、90度回る斜行エスカレーターがあるのではないか。

事務局
そこまでの詳細はまだ検討していない。

石丸委員
危険なところはあるが、可能性はある。カーブになるが、階段と並行し、下りることが可能である。

事務局
今の階段の形状をそのまま使用するのであれば、そのような選択肢もあるかもしれない。

今中委員長
技術的な問題はあると思うが、検討項目には入れたい。

静間委員
2階に下りる際、階段とエスカレーターで下りた位置が異なるため、動線が交錯しないか。この辺も検討してもらいたい。

今中委員長
エスカレーターも容量があり、難しい問題である。修学旅行生などは階段を使用する場合が多いと考える。臨機応変に考えるしかないか。

事務局
ハードのこともあわせてこれから検討していく。動線と実際の構造が上手く噛み合うように今後検討していきたい。

今中委員長
資料1は仮の位置図ということで良いか。

事務局
それで問題ない。

大井委員
(1)「原爆の開発から投下まで」の空間は、導入部分を観覧し終わった人と本館から東館へ戻ってきた人が交錯する場所にある。今の案の区切りのままであれば、来館者が混乱するのではないか。展示と建築を上手く調整していかなければならない。(1)の空間にある非常階段は現行もあるのか。

今中委員長
非常階段があり、その周りにソファーが設置されている。これらは残す予定なのか。

事務局
外が良く見える場所でもあり、残す方向で考えている。

大井委員
(1)の展示のデータ量が多いように思うが、この空間内で収められるか。雑然とするのではないか。

今中委員長
この空間は、現在、ミュージアムショップや手前側の新聞記事の切り抜きが掲載されている場所も全て含める予定のはずである。

事務局
現在の壁面など、全て枠をはずす予定である。

今中委員長
広さで言えば、かなり広いのではないか。

大井委員
実施設計の過程で確認しながら進めなければならない。

今中委員長
導入展示も同様である。図面に起こす際の参考になるので、検討課題は是非挙げてもらいたい。

水本委員
今回の案で(1)(2)(3)の空間に分けているが、展示の分量で言えば、(1)が多いと思われる。(1)の前半を(1)の空間で展示し、(1)の後半を(2)の空間の一部で展示しても流れとして問題ないのではないか。三つの区切りありきではなく、全体の流れの中での大まかな区分けという考えで良いのではないか。

今中委員長
今回の案は仮ということで良いか。

事務局
良い。

石丸委員
展示の技法についてであるが、本館を観覧した人は疲れて東館に戻ってくるため、メリハリや抑揚がなければ来館者はそのまま通り過ぎてしまう。問いかけなど観覧者に興味を持たせるような展示手法が必要ではないか。展示の流れを見失ってしまえば人は興味を失ってしまうため、働きかけがここでは必要ではないか。本館では緊張感を持って観覧しているが、その緊張感から解放された後、そのまま展示を観ることなく、流れていく可能性もある。

静間委員
東館の展示の分量が多いように思うが、東館の展示の分量が本館以上であれば問題があるのではないか。今回の案においても、(1)(2)(3)の空間で相当数の映像を使用することになっている。本館とのバランスを考えた方が良い。

今中委員長
今回事務局が例示している資料は、展示資料の候補として考えられるものを列挙しただけである。展示スペースは決まっており、壁面を隙間なく埋めようというものでもない。観覧者の立場に立ち、今後、具体的な資料は検討していきたい。「平和記念資料」を展示する館という意味において、高校生などにもしっかり読んでもらうために情報量は多い方が良いと考えるが、多過ぎるのも問題がある。来年度以降、詳細を詰めていく過程で委員の皆様に再度意見を出してもらいたい。

大井委員
事務局から現行の東館の展示内容の上映があったが、見せたいもの、伝えたいものが多いのは良いが、詰め込み過ぎている感は否めない。展示の方向を絞り、通り過ぎながらでも展示の内容が分かるよう、展示の技法も含めて検討することが東館においては重要ではないか。

水本委員
展示に関しては、取捨選択をした方が良い。展示とあわせて図録も改訂する必要がある。図録で様々なものを紹介し、展示は多少簡素でも良いのではないか。そのような方法で資料を生かすことも検討できる。

大井委員
検索機器などを充実させるという方法もある。本館を主に見る人、学習・研究等でじっくり滞在し調査をしたい人向けに展示を分けても良いのではないか。

水本委員
主動線と、もっと詳しく観たい人用の動線を設けるという工夫もあって良い。

今中委員長
図録を作成し、入館者に無料で配布するのか、有料にするのかも問題である。簡単なものであれ、作成するということになれば経費がかかることになるが、現在、一部どれくらいの作成費用がかかっているのか。

事務局
入館者に無料配布しているリーフレットの場合は、言語によって異なるが、10円足らずと記憶している。

水本委員
図録について発言したのは、現在有料で販売しているものがあり、それを改訂する必要があるという意味からである。

大澤委員
資料については、これから絞り、どこに焦点を当てるかということを考えれば良いが、日中戦争や植民地政策、なぜ広島に原爆が投下されたかという歴史的背景を説明する資料が必要なのではないか。

今中委員長
導入展示の観覧時間は5分以内であるため、触りだけになると思うが、それらは導入展示の中で展示することになる。

水本委員
2階の「広島の歩み」の冒頭の部分でも触れることになっている。

大澤委員
現在の展示で、植民地化に関するパネルが一枚あるが、非常に重要であると考える。

今中委員長
現在は東館の1階から入る流れであるため、そのように感じることもあるかもしれないが、更新後は本館から観覧することになるため、なぜ投下されたかという説明は、導入展示で簡潔に工夫して入れるしかないと考える。

大澤委員
導入展示の中で説明するということか。

今中委員長
そうである。
非常に簡潔で簡略化した説明になると思うが、なぜ本館のような実態があったのかということを5分で観覧する導入展示の中に前段として入れるということである。

神谷委員
展示において、焦点を絞り、ストーリー性を持たせるという意見に賛同する。
6ページの「核拡散の経緯」の説明で、北朝鮮の核開発まで取り上げているが、核兵器の拡散は非常に深刻な問題であると考える。北朝鮮を始め様々な国が核を開発しようとしている。それに加え、現在世界が恐れているのは核テロの脅威である。9.11以降、戦争の形態が変わったと指摘されており、核兵器が小型化されることにより、日常的な空間に持ち込まれる可能性が生じている。大都市に小型化した核兵器を持ち込むことにより、核被害を発生させることが現実のものとなりつつある。「核兵器の拡散」の項目内で、核の形態の変化、核が日常的に私たちの生活の中に溶け込む可能性があるという脅威を、何らかの形で展示することが出来れば、核の問題が過去の問題ではなく、日常かつ現実的な問題であるということを一般の人にも理解してもらえるのではないか。

宇吹委員
展示手法について、ストーリー性を確保するいう意見には賛同するが、複製資料でストーリー性を確保する手法は、機能していないと感じる。リトルボーイなどの模型の展示は、本館展示にとって重要なのか。現在東館に展示されている投下命令書から何を読み取れば良いのか。現在であれば映像を使用し、簡潔に分かりやすく説明することは可能である。長崎にもファットマンの模型などの展示があるが、私は展示しない方が良いと考えており、長らく違和感を持ち続けている。

今中委員長
リトルボーイの現物は展示する必要はないという指摘か。

宇吹委員
現物中心にという意味である。リトルボーイに関連し、実際に広島市民が触れたラジオゾンデやパラシュートの布等であれば良いと考える。リトルボーイに類する実物資料は、アメリカの博物館等で展示されている。広島では広島でしか見ることの出来ない現物を展示し、全体としては、ストーリー性を確保するために他の方法ですれば良いのではないか。

静間委員
リトルボーイは写真があれば良く、実寸大の模型が本館で展示されているのは異様な気がする。模型が本館に展示されるのは良いのか。

今中委員長
現代の核兵器は4トンという重さの爆弾では決してないが、一方で、当時威力を持った兵器の実寸大を見て実感を持つ人がいるかもしれないし、張りぼてのようなものは必要ないという意見もあるかもしれない。このことについて何か意見があるか。

大井委員
近年核兵器が小型化され、私たちの生活圏のすぐそばで核爆発が起こるような時代になってきているのは確かである。資料館は、単に65年前に広島に投下された原爆の被害を展示するだけでなく、今日にどのように繋がっているか、広島に投下された核が、今私たちの身近にあり、その状態は恐ろしいことであるということを来館する若い世代を含め伝えなければならない。リトルボーイの模型の展示の是非の前に、基本的な理念として、どういうものを伝えたいかということを整理していく必要がある。過去のものだけを展示する場所ということになりがちであるため、今回の計画の中でしっかり考えた方が良い。

石丸委員
核の拡散の問題は、核保有国の問題にとどまらない。核が存在する限り、国家以外の所有も重大な問題であるにもかかわらず、現在の案ではそのように構成されていないため、姿勢を改めるべきである。

静間委員
「原爆の開発から投下まで」のコーナーに関して、現在の展示ではウラン爆弾の開発の歴史のみ言及している。アメリカは、プルトニウム爆弾の開発もごく短期間で、ウラン爆弾と並行して進めていた。長崎の原爆の被害に関する展示を今回加えるのであれば、原爆の開発の歴史を紹介する際に、プルトニウムに関しても言及してもらいたい。

今中委員長
多面的な意見も出たので、今この場で集約は出来ないが、事務局で受け止めてもらい、整理したい。


【議題(2) 広島の歩み(東館2階)の展示の構成】

【事務局】
広島の歩み(東館2階)の展示について、資料4~6を基に、展示候補資料の画像をスライド上映しながら説明。

今中委員長
広島の歩み(東館2階)の展示の説明に対して、御意見・御質問があればお願いしたい。

石丸委員
現在2つのフロアにわたり展示しているものを1つのフロアに収め、なおかつ新しい項目を加えるため、内容がかなり圧縮されるかと思う。筋書きが不自然にならないよう、圧縮の仕方を気をつけなければならない。
テーマで「ヒロシマの復興と支援」とあるが、この段階でカタカナの「ヒロシマ」を使用して良いのか。
「戦時下の広島と戦争」は日清・日露戦争を含めた戦時下という説明であったが、問題はないか。
海外からの様々な支援については言及するべきではあるが、取り上げ過ぎると、海外からの支援によって広島が復興したと捉えられかねない。広島は苦労しながらも復興を果たしたと説明するべきであり、あわせて海外からの支援もあったと言うべきである。海外から様々な支援があり、有難かったのは事実であるが、海外からの支援によって復興したという訳ではない。

水本委員
「戦時下の広島の戦争」は、現在の「戦前の歩み」と比較すれば、展示量は圧縮されると思うが、日清・日露の戦時下、広島に大本営が置かれており、軍事色が強い都市であったという歴史的事実などは明確に示すべきだと考える。近年、広島城の学芸員による第五師団内の司令部の詳細についても調査が進んでいるため、これらの機関と情報交換をし、広島の当時の様子を正しく示すのが良い。
「海外からの支援」の項目内で、赤十字国際委員会のマルセル・ジュノー博士に関する展示はするのか。

事務局
この項目内で展示する予定である。

水本委員
アメリカに対しても批判的で、東京に戻った後もスイスに更なる支援を求めるために行動するなど、ジュノー博士の功績は大きいため、展示するべきだと考える。
戦前の日本の歩みと原爆投下の関係をどうとらえるのかについては、問題意識としては大事である。アメリカの多くの人にとり、原爆投下は戦争終結の手段ととられており、アジアの人にも、原爆投下は、戦争の終結と、日本の植民地支配からの解放に効果があったという認識は今も根強い。戦争の構造だけを見れば、広島・長崎への原爆投下とソ連参戦により、日本は無条件降伏を受け入れたということになり、これは多くの歴史家も認めている。しかしながら、それゆえ、原爆投下は正義であったという議論に発展するのは間違いである。原爆投下は、戦争を終結させるために十分な打撃を与え、戦争政策としては有効であったが、内容は無差別かつ大量に非戦闘員を殺した非人道的な兵器であり、国際法違反であるという二つの矛盾する側面を持っていると考える。広島の資料館としてどちらを示すかであるが、戦争の問題は本来国家の問題であるため、広島では非人道性を示すべきというのか基本計画での議論であった。戦前の歴史に過度な力点を置き過ぎると、非人道性の部分が薄れるだけでなく、二つの矛盾する側面により、観覧者をかえって混乱させてしまうのではないか。基本計画の議論において、戦争の流れに関する展示は圧縮し、非人道性・核の危険性から展示するという議論であった。一方、展示量は少なくとも広島に関連する戦争の部分は明確に示すべきであるので、日清・日露戦争以降の広島について、明確な問題意識の下、説明文を作成しなければならない。
「被爆者援護」の韓国及び在外の被爆者について、特に韓国の被爆者については、できるだけ最新の情報を収集し、展示することが必要だと考える。

大井委員
資料4の東館2階の図面を見ると、(1)「ヒロシマの復興と支援」と(2)「平和への取組」の部分の下は、階は異なるが同じような空間に企画展示室とミュージアムショップが存在し、その左手で入口及びホールへと繋がっている。今回の展示計画の中で、一番の目玉は本館を最初に観覧し、その後、東館に戻り、企画展、ミュージアムショップ、入口(出口)へと進むことにある。川の流れで例えれば、本館が川の源流であり、順に下におり、海(平和公園)へ出るという流れである。企画展示室、ミュージアムショップ、出入口付近は海へと繋がる汽水域である。「ヒロシマの復興と支援」については流れで言えば、場所として問題があるように感じる。企画展示室、ミュージアムショップは無料で出入りが出来、重要な場所である。現行では原爆ドームの模型で繋げているが、現行も無理がある。隣接する空間においては、交わりの部分の役割も検討しなければならない。出入口のホールの使用の仕方も今後整理した方が良い。

大澤委員
4ページの「ヒロシマの復興と支援」の③「海外からの支援」について、例えば昭和30年代に各地から様々な樹木が広島に送られてくるなど日本からも様々な支援があった。海外だけでなく、身近でも出来ることがあるという内容のことを展示に盛り込む方が良いのではないか。神戸の震災後、昔の返礼として広島から樹木を送ったという新聞記事も読んだことがある。
5ページの「平和への取組」の②「市民による平和運動」についても、誰でも何かが出来るというメッセージを盛り込んでおくのが良い。過去には日本だけでなく海外からも支援があったが、平和の取組は特別なものではなく、絵や書道を平和のコンクールに出したり、平和大通りの慰霊碑を清掃したりするのも平和活動であり、若い世代が誰でも出来る平和運動があるということに言及すれば良いと思う。言及する予定なのか。

事務局
展示についてそこまで具体的には考えていない。

大澤委員
どのようなイメージなのか。

事務局
観覧後の心情に配慮した場やミュージアムショップで、資料館を観覧した人が誰かに宛てて手紙を書いたり、ノートに感想を書いたりするということは具体的にイメージしているが、その橋渡しとなるような展示については現段階では考えていない。

大澤委員
誰にでも出来る平和運動があるという理念を頭の中に入れて、展示を考えるべきだと思う。

大井委員
「ヒロシマの復興と支援」は、現行の観覧順序で言えば最初に観るものであるが、改修後は終わり頃に観ることになっているため、すっきりと納得できないものがある。全体の大きな流れの中で、この展示は、現行のものに少し手を加えるだけで良いのかという疑問も残る。

石丸委員
「戦時下の広島と戦争」と「被爆直後の混乱と占領下での復興」を繋げて展示することになっているが、この間に被爆があるということを意識しないで観覧させる方法が良いのか疑問がある。「戦時下の広島と戦争」が「ヒロシマの復興と支援」のくくりの中に入れられているが、空間的にも分ける必要があるのではないか。
復興に関して、現行案では十分展示出来ないのではないか。復興の問題を十分取り上げるには、別の施設が必要であると考える。その施設に繋げる展示をするという話があっても良いのではないか。広島の復興を理解するのにこれで十分とは決して言えない。

今中委員長
別の施設にという提言は、基本計画での議論の際にも石丸委員からあったが、実現性に乏しいようである。それも考慮し、今の意見をどう検討するか。
資料6で例示された資料は、現在展示されていないものも多く羅列してあり、全て展示することは出来ないため、今後絞りこんでいくことになる。また、新たに例示した資料の方が展示するのに良いかどうかなども、今後取捨選択をしていくことになる。
特に、爆心に近い中島町については、田邉氏がかなり優れたCG作品を制作されていると伝え聞いている。その作品を展示に利用することに関して資料館として問題はあるのか。

事務局
特に問題があるということはない。今後検討していくことになる。

今中委員長
スペースとアピール効果の兼ね合いもあると思うが、市立大学なども協力して優れた作品を制作しているため、スペースをあまりとらないようであれば考慮に入れても良いのではないか。

水本委員
5ページの「平和への取組」の②「市民による平和運動」と③「被爆体験の継承・伝承」について、「市民による」は、担い手はどのような人たちかということを念頭に置いていると思うが、大きな団体もあれば、平和団体もあり、また、時代ともに徐々に変わってきている。最近はNGOや個人、中・高校生などが担い手となっているという側面がある。また、活動の目的も核廃絶や被爆体験の継承など、多様な平和への取組があるため、②と③はもう少し整理した方が良いのではないか。

事務局
基本計画の議論の過程で、被爆者団体の運動に関して積極的に言及した方が良いという意見があった。それを含めて大きな流れの中で取り組めば良いということか。

水本委員
②は被爆者団体を意識したものか。

事務局
そうである。

水本委員
それは問題ない。

事務局
それを含めて整理すれば良いという意味か。

水本委員
被爆者団体などの運動を念頭に置いたものは②であって、③は多様な市民の取組について展示するという整理であればそれで良い。

事務局
水本委員が被爆者援護に関して触れた、韓国の被爆者の問題については、韓国人の被爆者がいたという観点ではなく、援護の観点から言及するべきだというものか。

水本委員
被爆者としての存在自体も重要である。援護の問題の項目で問題提起をしただけである。援護の問題だけでなく、「被爆の実相」の展示や、「平和への取組」の展示でも、韓国の被爆者について言及するべきというものである。

事務局
その問題を抑えておく必要があるという意味か。

水本委員
そうである。

リーパー委員
潜在的なものとして展示案に含まれているかもしれないが、この場所で強調したい点が幾つかある。
現在、世界が保有している核兵器の威力と比較すれば、広島に投下された原爆はおもちゃのようなものである。2メガトンの水爆が広島で炸裂すれば巨大な穴しか残らない。この威力の核10発程度で地球は「核の冬」に近い状態になる。地球への脅威である。原爆は人類を破滅させる可能性があるということを明確に示すべきである。
冷戦の力の構造も消滅し、現在人類は、核兵器を所有するか、廃絶するかという選択の岐路に立たされている。多くの国が核兵器を所有すれば、使用されるのは時間の問題である。多くの国家、人々が核兵器を所有する可能性のあるテロの時代において、核抑止論はすでに過去のものである。
広島に投下された原爆は、戦闘員・非戦闘員を区別出来ず、残酷かつ非人道的な兵器である。原爆を製造したこと自体が戦争犯罪とすら言える。これらを婉曲に言うのではなく、核は絶対悪であるというメッセージを明確に伝える必要があると考える。

今中委員長
東館の2・3階について貴重な意見をいただいた。東館はエスカレーターや「観覧後の心情に配慮した場」などの設置により、展示スペースは減少している。取捨選択をしながらアピール効果の高いものに仕上げるということが求められている。今日出た意見は整理し、次回の3月の会議のテーマを観覧後の心情に配慮した場にするのかどうか一任していただき、事務局の整理状況をみながら東館について再度詰めたいと考えている。

【事務局】
今後のスケジュールを説明

《閉会》